日記  始まり02.7.??
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和ちゃんと一緒に!!

★日付不明
雷鳴が轟いた。夢だったのだろうか? いや違う。布団から起き明かりを灯し、時計を確認すると深夜2時半。カーテン越しの窓からはピカッと稲妻が閃光している。季節は初夏。夕立と表現するには遅すぎる時間だが、開けっ放しで風通しをよくしているあちこちの窓を閉めなければ雨が吹き込んでくる。突発的で風も強い。
2階に上がる。和ちゃんは眠っておらず、一生懸命に1円玉を数えていた。
昼夜逆転? 和ちゃんに聞くと、眠れないそうだ。

★7月22日
朝、2階に上がると、和ちゃんが入れ歯を持っている。今使用しているモノとは違い古いヤツなのだが、財布の中に保管してあったと言う。
これをきっかけ? 以前から行動せねばと考えてはいたのだけれど、“踏ん切り”がつき介護保険申請に行動開始。
健生園の三木さんに連絡。三木さんのところでは“いっぱいイッパイ”で訪問調査を断っているとのこと。
とはいえ、和ちゃんの件を相談する。三木さんからのアドバイスでは痴呆の場合、確定診断をしておいた方がいいということで林病院の星さんに相談をするのがいいとのこと。即、星さんに電話。
星さんからは、それなら藤原先生がいいということで、7月29日の月曜日。午前10時半を予約。介護関係に知り合いが増えているので、オヤジの時は全く情報量が違う。

★7月29日
診断については林病院に資料あり 降圧剤はアムロジン
さいさきが良かった。タクシーの運転手さんが、和ちゃんが働いていた当時、つまり西大寺商業協同組合時代のことを覚えていてくれて話しが弾んだ。運転手さんは以前、配送業をしていて和ちゃんの勤務先には頻繁に立ち寄っていたとのこと。

★7月31日
藤原先生との会話テープあり 私と藤原先生
診断結果は、アルツハイマー中期〜後期。長谷川式簡易知能評価スケールでは30点満点の7点。
100−7さへ回答できなかった。

★8月2日
しかし、考えてみると、ここまで悪いとは思わなかった。とはいえ、まだ初期だったっ頃? に林病院へ行こうと言っても、行かなかったと思う。プライドが許さなかったと想像するのだけれど。口論は必至。

珍言
お腹が話しかける
 明宏1号 2号 3号

★8月3日
なぜこうなったか? それは黒い服を着た人と話をしたから テープ収録

★8月5日
和ちゃんの若かりし日の写真を出してきて一緒に観る。綺麗なお袋がそこにいた。なにやら、初めて和ちゃんにオンナを見たような気がして不思議な気分になり、笑っている和ちゃんを側に目頭が熱くなった。

★8月7日
昼食を済ませた頃、操山在宅介護支援センター:ケアマネジャー・長谷川さんより電話があり、訪問調査についての件。9日の金曜日の午後2時にお願いした。
私の家が分かりずらいらしい? ポケットアトラスというソフトで、8000分の1程度の地図を10枚プリントアウトした。これからは、他業種の方々にお世話になるやもしれず、訪問をお願いする前に地図を渡さないと。
和ちゃんは、今日もいろいろと悩んでおり、息子が電気代を支払っていないので支払って来て欲しいと頼まれる。その請求書は去年のモノで、もう支払ってあると告げると泣いて安心した。
そういえば、コープへの買い物途中、たんぼのあぜ道で赤トンボを見た。もう秋? お盆も近い。

★8月8日
今日は、暦(こよみ)のうえでは立秋。確かに昨日、赤トンボを見ているし秋間近なのだろう? しかし、連日摂氏35度を超す暑さで夏ばて。和ちゃんの影響もあるのかなあ?
ところで今日の昼、高校時代からの友人から電話があった。明日、岡山に帰るから時間はあるか? とのことだったが、明日は操山在介支の長谷川さんが訪問調査に来てくれるので断る。
和ちゃんがアルツハイマー中期であるということと、私が面倒みたいことを告げると、ヤツの血縁にもアルツハイマーを患った人がおり、
「せえでも野田よ、オメーはフリーで独り身じゃからできるんで。ワシの従兄弟のオヤジもアルツハイマーにかかったけど、家族を持っとったら家で介護やこうなかなかできんで! あいつも施設へあずけたがな」
でもなあ? と思う。家族があるから面倒看れるんじぁあないの? と。
しかし、今朝は、やはり和ちゃんを怒ってしまった。冬物のジャンパーを出してきて、
「今日、乾くかな?」
と質問されて
「そりゃー、クリーニングだして、しもうとんじゃねえか。そんなことばあよったら、ワシと一緒に住めんようになるで! 施設しかねえで。よお考え? アホか?」
すっげえ自己嫌悪。

★8月9日
昨晩、血圧計測後、冷蔵庫の側に置いてあった、封を切ってから半年以上のポカリスエットを飲もうとしたので
「なんしょうなら。アホか?」
と大声で怒鳴ってしまった。
冷蔵庫の中に“かずこ”と書いてペットボトルにお茶を入れているのだけれど、同じペットボトルなので勘違いしたのかもしれない。
しかし、これには少々ショック。誤飲という範疇ではない。なんでも飲んで、食べてしまうのではないか? という不安。参った。この夜、トイレの場所を間違えて下に降りてきた。深夜1時。
午後9時頃に和ちゃんは眠る態勢にはいるから、こちらもそれに併せないと眠ることができない。
ただなあ、と思う。“抑制”について。
「家から出ていくなよ」
これも抑制だよなあ? と。縛るだけが抑制とは違うなあ。言葉でも、いろんな抑制をしてるし。今日は、訪問調査。
さっきまで、手を繋いで、30分ほど布団にゴロンとしていた。
訪問調査があるので午前中にコープに買い物。コープに向かっていると、勇み足的な坊さんが早くも家々を廻っている。とりあず、仏壇に備える花だけは買ってきた。
和ちゃんは意気揚々と花を生ける。楽しそうだ。写真に撮る。
長谷川さんが午後3時半ジャストに訪問。和ちゃんは楽しそうに、長谷川さんと談笑するかのように彼女の問いかけに答える。和ちゃんの回答はチンプンカンプンだが、結構、話しは通じている様子。
長谷川さんが帰った後、
「可愛い人じゃったなあ。優しい人ばあでええなあ」
と嬉しそう。
この訪問調査も写真を撮る。テープも収録。

★8月10日
午後6時50分。今、和ちゃんの背中を洗って流してきた。首下が痒いと言うので、首下も丹念に洗った。まあ、適当なら一人でできるのだけれど。
二日ぶり、昨日、一昨日と家にいたので、久しぶりに岡山に出、グロスに行った。矢野さん、蜂谷氏も登場。気分転換にはなった。とはいえ、2時前には帰宅。昨日の写真のできはマアマアかな?
しかし、しんどい。このまま、いったいどうなるのだろう? これだって書く気がしなくなってきている。いくら第3者的視点で捉えようとしても、見守りはキツイ。
抑制と管理。難しい境界線。
「家から出るなよ」
と和ちゃんに言って、家を後にするのは抑制か?
少々、凶暴な部分が出現してきているのではないだろうか? ドンドンドンと、畳を叩いていた。
「腹くそが悪い」
という声も出だした。ハーーーーア。

★8月11日
言うまい、言うまい、と心掛けている、
「あほう!」
を、和ちゃんが入浴前に連発してしまい和ちゃんが泣いた。
病気で出来ないのだけれど、どうしても同じ間違いを繰り返されると腹が立って怒鳴ってしまう。和ちゃんのアルツハイマーを客観視するということは不可能なのか?
肛門付近が汚れていたので、何遍も拭いた。尻の肉はかなり削げ落ちてしまっている。
キツイナア! 肉体的にも精神的にも。

★8月12日
今朝は早朝から雷雨。8時半に美容院の予約をしていたので少々迷ったが、雨も小降りになったので和ちゃんの髪をカットだけしてもらった。普段は髪も染めていたらしいのだけれど、カットとシャンプーで3800円。写真あり。
気分転換に岡山に出る。カッファに行くと、岡田さんが湯布院へ行くと言う。嫉妬。

★8月13日
今日から、連日行ってきた血圧測定を2〜3日に1回にすることにした。だいたいの血圧のリズムはこの半月で確信できたと思うから。
で、今、コープから帰ってきた。コープで知り合いの女性と会い、
「お袋がアルツハイマーと診断されて..」
と言うと
「大変じゃなあ! せえでも、嫁さんおったらこんな苦労もせんでええのになあ?」
との返答。
ビンゴ!! かな? 
だけどなあ、「大変じゃなあ!」と言ってはくれるけど、介護を知らない人ほど「大変じゃなあ!」の言葉で返答してくるような気もするのだけれど?
そういえば、備前市の男女共同参画企画から、10月22日に講演の依頼があった。もちろん介護がテーマなのだけれど、和ちゃんの事も話そう。
今、和ちゃんは、一生懸命に人参を切っている。明日朝食のみそ汁用の。まったく、夏バテの様子はない。
和ちゃん名言
和ちゃんが人参切りを終え、まな板を洗って後始末をしていた。だいたい、この後始末がなかなか上手くいかない。新聞広告のチラシでくるむだけなのだけれど。
「あのなあ和ちゃん。いつも通りに、あれを、えーと、あそこじゃがなあれを? ウーン?」
“まな板”と“炊事場”という固有名詞が出てこないのだ。これは、痴呆患者に現れる症状だとも記憶している。そして和ちゃんが言った。
「あんた、私みてえになりょんじゃねん?」
和ちゃんは、自分の脳作動の不自然を理解している。アルツハイマーが何か? は理解してないのだけれど。

★8月14日
疲れている。昨夜は8時に床に就いてしまった。夏バテと、和ちゃんの見守り疲れに違いないと思うけれど、和ちゃんは相変わらず元気だ。
昨日、“呆け老人をかかえる家族の会”のサイトを覗くと、岡山県支部では9月13日に保健福祉会館で会が開かれるとなっている、会員に登録しようと思う。
今朝、和ちゃんは工場に行ってくるからと言う。どこにあるん? と聞くと、答えがでない。ただ、何かをやっていないと気が済まないらしい。
若い頃は、よく働いた人だから。
そして今日、久々にスタミナドリンクを買った。

“呆け老人をかかえる家族の会”のサイトで共感した箇所

介護家族の意見(家族の会の会員の介護家族の介護保険についての意見を紹介します)

実母の入所に迷う娘の気持ち
(愛知県I さん)
実母(74歳)を3人の娘でみています。3人とも実家とは別に家をもっていて、交代で実家に泊まったり、自宅に連れ帰っています。(お金や保険のことは三女の私が担当)。一見平等ですが、押しつけ合うこともあり、現在、母をグループホームに入れる相談をしています。1ヵ月で12万円くらいかかるそうですが、母の年金でまかなうことができます。今はショートステイとデイサービスで月に4万円余計にかかる8万円分をもらって、無職の私が毎日面倒をみるか、とか考えますが、お金より自分の時間をもちたい。どんどん症状の進む母の姿を見ていたくない。ストレスをためたくない。母にとっても毎日娘たちに叱られて暮らすより、親切な人に囲まれてすごす方が幸せではないのかと思う反面、娘が3人もいて、どうして白宅でみてあげられないの? やっぱり一種のうば捨てだよなと、心はゆらゆら揺れています。実母を施設に入所させる時、娘はどのように決心したのか? 聞かせてください。きっと自分が倒れたからだよね。私たち一人も倒れてないもんね…。※経験のある会員さんからのお便りをお待ちしています。

★8月16日
昨日、カメラマンの蜂谷氏から日本酒吟醸のいいのをもらったのだけれど、日本酒を飲むと身体がだるくなるので、飲もうか飲ままいか? 迷っている。和ちゃんの見守りに影響があっては困る。今は、発泡酒もアルコール度5.5から4.5に落としている。身体がかったるくなると、つい怒りっぽくなってしまうからだ。
今朝、といっても早朝、やはり3時頃から2階の部屋でゴソゴソとやっているのがわかる。借家が古いので少しでも動いていると下まで響くからだ。
4時、私は自分の布団から出て、和ちゃんのゴソゴソしている現場に行き、もう一度寝るよう説得。そして、手を繋いで1時間半ほど眠った。和ちゃんは、目を開けていたようだけれど。
毎朝、起きると何かが無くなっていると言う。今朝は、目薬を荒らされたらしく、目薬の液でその辺りがビショになっていたとのこと。
和ちゃんも、なかなか大変だ。
今、午前9時15分、和ちゃんは私の後方で、古新聞の梱包をやっている。なにかをしていると楽しそうだ。新聞梱包の写真あり
ゆであがってるカップ冷麺を昼食後、昼食後はいつもそうなのだけれど、翌日朝食用のみそ汁の人参と大根を切ってもらう。今日の大根は硬かったので私が千切りのように切り、包丁とまな板は和ちゃんに頼んだ。
和ちゃん、まな板をしっかり歯磨きのチューブを付けてたわしで磨いている。
「なんしょんならアホウ」
また出てしまった。これは、あまりの異常な暑さが言わせるのか? 今日も摂氏36度が予想されている。
その罪滅ぼしというのではないけれど、和ちゃんのスカートのゴムが延びてグスグスになっており、ちゃんとキッチリフィットするようにゴムを入れ直してあげた。
喜んでいる和ちゃんの顔・表情を見られてこちらまで嬉しくなる。
優しくしてやりたいのだけれど。いつも?

★8月17日
今、缶ビールを飲みながらパソコンに向かっている。午後3時。アルコールには早すぎる時間かもしれないが暑い。岡山の図書館に本を返し、コープで夕飯の買い物をし、みず風呂に入り、そして今がある。
今日も岡山繁華街を歩いていて、最近頻繁に思うのだけれど、何かを背負って生きてる人っていうのはどのくらいいるのだろう? と。

徳川家康遺訓と後世に伝えられている文言
●人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。不自由を常と思へば不足なし。心に望み起こらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思へ。勝つことばかり知りて負くることを知らざれば害その身に至る。己を責めて人を責むるな。及ばざるは過ぎたりより勝れり●

まあ、私も若い頃は自分のことだけを考えて、お気楽な人生を歩んでいたのだけれど。
今朝、和ちゃんが洗濯物を干してる写真を撮った。
「顔はカメラに向けた方がええん?」
なかなか気配りが利く。全てに、こうあって欲しいのだけれど。

★8月18日
昨夜、0時頃に上でゴタゴタしているのが分かった。行ってみるとトイレが分からないと言う。トイレの感覚はしっかりしているのだけれど、トイレの場所が時々、夜、判断不明の時が増えてきた。
参る。
こちらも、一度目覚めるとなかなか新たな眠りに入れない。病気のせいだと理解していても腹が立つ。
どういうわけか、早朝3時にはゴソゴソ始める和ちゃんがゴソゴソ始めない。こちらは眠りに入れないから、いつ始めるのか気になる。
5時。上がってみると、身体を丸めて熟睡している。こんな時、安らかな寝顔を見ながら優しくしなければとつくづく思う。
私は好き勝手な人生を送ってきた。“人生”。生まれてきて良かったと心から思っている。そう思わせてくれた、そうさせてくれたのが和ちゃんなのだから。
この人は、今、自分が年金生活者であることを忘れて、日々おカネの心配をしている。

★8月19日
今朝、和ちゃんは引き出しからいろんなモノを出して、万年床の周りを散らかし放題。こういう事は最近多いのだけれど、今日のはかなり激しく、私も、
「おえ、ちゃんとかたづけとけえよ」
と強く言って家を出た。
外から電話すると、泣き声でかたづけていると言う。こちらまで心が痛む。
昨日、和ちゃんの入浴シーンを写真におさめた。まあ、なんとかイメージ通り。和ちゃんに見せると、
「裸の写真は“風がわりい”から私にちょうでえ」
とのこと。脳が完璧に破壊されてはいないようで、私も一安心。
でも和ちゃん、これは使うよ。ゴメン!

★8月20日
昨夜、和ちゃんはいつもより早く床に入った。といっても万年床状態なのだけれど。
で、私は8時ではあまりにも早すぎるので森村誠一の本を読んで10時半、これから眠ろうとしたとき、和ちゃんはトイレに行った。下からでも、動く所で判断できる。
ところが、なかなかトイレから出ない。心配になって上に行き、トイレの外から声をかけると、
「ウンコ」
と言う。
まあ、それならゆっくりしてくれればいいのだけれど。
ウンコを済ませて和ちゃんはトイレからでてきた。私は、トイレットペーパーはまだあるか? とりあえず確認のつもりでトイレを覗いたら、和ちゃんはトイレの便器の外にウンコを漏らして平気で出てきていた。
私はそのウンコの始末をし、和ちゃんに、
「和ちゃん、もう一歩前に進んでウンコをしてくれる」
ここまでは、良かった。ウンコの始末も、オヤジの時もやっていたのであまり苦にはならない。
ただ、私は瞬間、イヤな予感に襲われ、和ちゃんのパンツを見せるよう言った。
案の定。和ちゃんはしっかりウンコを拭いておらず、パンツにウンコがかなり付着している。
それについて和ちゃんに問いただすと、和ちゃんが確認するかのように自身の手を肛門に持っていった。当然、手に拭き残したウンコが付着する。パンツから出した手で、あちこち触ろうともする。
「コリャア! なんしょんなら? クソアホウ」
どうしても怒ってしまう。
堪忍が足らない。介護力というチカラも不足している。
もちろん、パンツを脱がしてペーパーで拭いた。肛門付近の筋肉は削げ落ちている。痩せてしまった和ちゃん。
怒り。切なさ。自己嫌悪。先の見えない不安等々。
今も、あれから寝付かれなかったので、疲れて? ウーン、あの後眠ったことは眠ったかな? でもなあ、本当はこの日記を書く気もしない。なにやら疲労感が違うのだ。
「ウンコが勝手に出たらいけんから、紙(トイレットペーパー)をパンツの所に挟んどかあ」
と和ちゃんは言ったけれど、そうなるとオムツということになる。
病気とはいえ、もう少ししっかりして欲しい。
ただ、トイレで漏らしていたウンコを、私が拭いているのを見ながら、
「スミマセン スミマセン」
と泣いていた。スミマセンとは、私が和ちゃんの息子であることを理解していないのだ。
厳しい。
そうそう。昨夜はそれから、初めて、和ちゃんの側に布団を敷き一緒に寝た。オッパイを触ると、そこはオッパイという意味のふくよかさはなく、ただの胸のような感触だった。
今朝、和ちゃんは自分が汚したパンツを自分で洗った。

★8月21日
夕食のあと、和ちゃんに歯磨きをするよう言った。歯磨きが無いと言う。歯磨きという固有名詞は口から出ない。歯磨きのチューブから出したモノを口の中にそのまま入れ、歯ブラシの代わりにスプーンを持ってきている。
歯ブラシを探すと、箸と一緒に別の炊事場にあった。
日に日に、症状は悪化しているように見えるのだけれど、こんな症状は前にもあった。
正直、あまり真剣に考えると、こちらまで神経がいかれそうだ。
今、私の後方で、和ちゃんが正座して、
「ありがとうございました」
と頭を下げた。さっき、和ちゃんの洗髪をしたからだろう。
なんとも言えない気持ちと言うか? 情けなさ。

★8月22日
3度の食事のあと、和ちゃんは自分のモノは洗う。今朝、水道の蛇口が固すぎて捻れないと言う。行くと、一生懸命に栓ではなく蛇口を廻している。
スカートの裾を縫うと言う。ヘアピンに糸を通していた。
笑えるけど、とーーーーても疲れる。

★8月23日
今日は、特別に書き記すような事件はなかった。おカネの支払いとか、紛失物についてはいつもにょうに何度も何度も繰り返していたけれど。
ただ、今日は私の自律神経失調症の診察を市民病院で受けるために午前9時半前に家を出たのだけれど、やはり和ちゃんのことが気にかかり2時前に家に帰った。
介護保険の判定がでるまでは、マンツーマンもどきの生活も仕方がないと思う。もっとも、どんな判定がでようとも、朝と夜はマンツーマンでいくしかないのだけれど。
今、午後7時半。和ちゃんは床で眠りに入り始めている。
明日の朝も早そうだ?

★8月24日
今朝も涼しく、和ちゃんもゆっくりしているようなので5時半に上に上がった。すると、和ちゃんは私用に、いつも私が和ちゃんの側で寝るときの布団を敷いていた。
ところで、今日の昼、最近は30度を超えない日が続いたので久々に散歩に出た。家から250メートルほどを往復。で、驚いたのが、まだ和ちゃんは靴ひもが結べる。これには驚き、早々にカメラにフィルムを入れ、改めて和ちゃんに靴ひもを結んでもらいながらカメラのシャッターを切った。
とはいえ、アルツハイマーというのは恐ろしい。今日も、ヘアピンに糸を通し、縫えないのに一生懸命に裁縫? をしていた。
昼食時。ペットボトルからコップに入れてお茶を飲むよう何遍も言っているのに、直接口をつけて飲む。ハイ。と返事した3秒後にはペットボトルの口が和ちゃんの口に吸い込まれている。
人参と大根の識別も困難なのか? 大根を要求したら人参を持ってきた。
ただ、自分の脳が壊れていることに不安を感じている様子も度々みせる。
高校時代、共に野球部生活を送った国屋が、中学野球で全国制覇したことを新聞で知った。当時、一緒に下宿していた山本完治からメールが入り、出張から帰った足で即、明石球場に息子のシニアリーグの野球の応援に行くという。
それぞれがそれぞれに人生をエンジョイしている。世間から取り残されていくようで不安な気持ちもあるが、日本全国で私同様に混乱している人たちも多いはずだ。
踏ん張ろう!!

★8月25日
今日は、とりあえず、何があっても怒らない、と決意しているせいか、まだ怒ってない。優しくする方が、こちらにもメリットが大きいし、自己嫌悪も少ない。とはいっても、まだ午後2時だけれど。
今朝、和ちゃんが裁縫をしているのを発見。しかし、糸を通しているのはヘアピン。針を持ってきて、糸を通して渡すと、しっかり玉結び? をして縫い始めた。スカートの裾のほつれを縫っているのだ。スゴイ!!
裁縫をする前、
「心臓がドキドキして今日はいけん」
と言ってたので血圧を測ると124−74。心拍数は1分間58。
まだこの辺りは理解できるらしい? 和ちゃんはしっかり気を良くし、復活してトイレ掃除に勤しみだした。もっとも、掃除をしているのかどうかは、観た人によって意見は異なるだろうけれど。
昨日は靴ひもも結べたし、今度、アイロンでもかけてもらおうかな?
それと、今朝はウンコが出てスッキリしたそうだ。

★8月26日
午前10時。今日は林病院に予約を入れてあった。もっとも、和ちゃんは行かないで、私だけが行ってきたのだけれど。
タクシー代金往復で7000円は痛い。
藤原先生に和ちゃんの過去の血圧データーを渡す。
これならいいですね、ということで、降圧剤はこのまま続行。
私は藤原先生に質問する。以前、新聞広告で、こんな問いかけが掲載されていた。薬品メーカーのものだけれど、9月21日は“世界アルツハイマーデー”といことだそうだ。

痴ほう症は、誰にでも可能性のある病気です。大切なのは、それを「仕方がない」とあきらめるのではなく、まず医療機関へ相談すること。まわりの家族が変化に気づいて「おや?」と、医師に診てもらうまで、約2年以上がかかっているとも言われています。最近、忘れっぽくなったな、と思ったら一日でも早く

確かに、和ちゃんの場合も包丁が冷蔵庫に仕舞ってあったのが約2年前。その時に診察してもらっていたら? でも、和ちゃんは精神科の病院に行くわけがない。
それを後悔していると藤原先生に言うと、理屈どおりにはいかないでしょう? と慰めてくれた。
なんか、今日は、あちこちで欲求不満の解消をしてきたな。ただ喋るだけだけど、スッキリした。

★8月27日
昨日夕食後、ウンコがスッキリ出たと報告を受ける。3個出たらしい。長いのが?
昨日、今日、まあまあの調子かな?
髪を洗った。身体の背も洗うから結構しんどい。風呂から出て髪をとかす時、
「えろうておえんで? 和ちゃん、たまには一人で二日ほど生きてみるか?」
和ちゃんが一人で生活できることなど無理なのに、こんなとんでもない嫌みを言ってる私がいる。
自分が本当にイヤになる。

★8月28日
林病院の藤原先生より、和ちゃんがアルツハイマー病中期であることを宣告されてから1ヶ月が経過した。アルツハイマーであることを知ってから、余計に和ちゃんの痴呆度が跳ね上がったように見えて仕方がない。まあ、より注意して観ているからかもしれないのだけれど?
昨夜、やはり気になって和ちゃんの側で寝た。和ちゃんは、私が側で寝るとすごく喜ぶ。私も、和ちゃんの笑顔がたくさん見られればいいなあ、と最近は心底から思っているからそれはとてもいいことで....なんだけど?
とはいえ、予測した通り和ちゃんはトイレの場所を間違える。和ちゃんが寝ているのは2階なのだけれど、1階のトイレへ行こうとする。1階のトイレへ行こうとするということは、やはり思考が定かでないわけだから、階段から転げ落ちることもある。
今はまだ手摺りはないけれど、手摺りを付けたとしても同様だと思う。だから、1階に下りないよう気おつけているわけで。
普段なら、というか、眠って目を覚ましてからウトロウトロ感覚でなければ問題はない。足腰はしっかりしてるから、かなり急な階段なのだけれど彼女の足取りは軽い。
藤原先生によると、
「オシッコがはずむから目が覚めるのか? 目が覚めているからオシッコに行きたくなるのか?」
前者だと確信する。和ちゃんの眠りは深い。
で、昨夜も3度起こされた。まあ、眠っていても私の脳裏にSOS発信されているのか? 熟睡にはほど遠く、和ちゃんが起きると私も目覚めてしまう。眠りが浅い上に何度も起こされてはこちらも不機嫌になる。それに昨夜は蒸し暑く。
「ワシの人生どねえなってしまうんなら?」
怒りは怒号となって和ちゃんに向かう。
なぜ私が怒っているか? 和ちゃんは分からない。そして泣く。
昼食を済ませコープに買い物。帰ってくるなり、
「ウンコが3個でました」
との報告。ウンコが出たら報告するように言っていたのだ。不思議とこういうことは覚えている。
「了解しました。和ちゃん」
和ちゃんの顔に微笑みが浮かぶ。
和ちゃんにとって私はもう息子ではないのだから、良きパートナーになりたいのだけれど。
難しい!

★8月29日
今日、“岡山市西大寺福祉事務所介護サービス係”から通知が来た。
「オオッ!! やっと判定通知が来たか」
と思い、不安と期待? 少々やっかいな気分で開封してみると、そこには、
“介護保険 要介護認定・要支援認定延期通知書”
とある。そして、9月9日には処理見込みとなっており、遅延の理由は、“申請が集中したため”となっている。
まあ、仕方ない事だとも思う。
早速に操山在宅介護支援センターに電話。担当の長谷川さんは訪問で不在だったため、他の人に連絡。この人に聞いてみると、?この時期は申請の移行期らしく?、確かに申請が集中するとか。
今日、和ちゃんは、頭の調子は可もなく不可もなくだった。
今晩も一緒に寝るか?

★8月30日
野球解説者だった故・小西得郎さんの名文句ではないけれど、
「まあ、なんと申しましょうか」
という気分だ。
和ちゃんは、さっきまで泣いていた。私に叱られて。
というのも、私の部屋の天井に水が落ちてきている。当然、2階から落ちてきているのだろうから2階へ上がってその付近を見回してみると、南側に向いた窓に沿って鉢を置いてあるのだけれど、鉢から水が溢れ出ている。それが、私の部屋の天井にしたたり落ちているというわけだった。
私は昨晩は眠れなかった。和ちゃんと一緒に寝たのだけれど、台風15号の影響か? 蒸し暑くって眠れず、和ちゃんの寝顔を観ながら、
「踏ん張ろう!」
と決意していたばかりなのに。
「なに考えとんなら? はよう水ふけえ。このクソアホウ」
と怒鳴ると、和ちゃんは床をドンドンと足踏みして抵抗した。私はその行為を見て、何も喋らず下に降りた。そして、数十分後、和ちゃんが謝りにきた。というか、言い訳。
「あれは私がしたんじゃねんよ。私はさっぱり、なんのことかわからんのよ」
忘れてしまっているのだ。
「もうゴジャゴジャゆうな。うるせえ。2階へ上がっとけ」
こんな経緯で、和ちゃんは泣いていた。
毎日まいにちが、なんでこうなんだろう?
これを書く気にも本当はなれない。疲れる。

★8月31日
とうとう8月も終わりか。
今朝、和ちゃんから報告を受けた。
「ウンコがでました」
「調子良かった?」
「太くて長いのが2本でました」
「そりゃあ良かったが!」
「ハイ。1ヶ月ぶりですから」
和ちゃんは、私が和ちゃんの後見人のような会話をする。普段、確かに、おかしな行動をしながらも、その行動・言動についての意味不明さに気づいていて、自分なりに悩んでいるのが分かる。
しかし、1ヶ月ぶりか。28日にも出しているのに。そういえば、オヤジを介護中にもオヤジが変なことを言っていた。
「看護婦さん。ウンコがもう半年も出てないんですわ。もう、口から出そうでかなわんのです」
とにかく、明日から9月だ。