12月24日〜03 1月28日
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★12月24日
今日、パソコンが修理されて帰ってきた。
クリスマスイブ。
これが、オレへのささやかなサンタさんからのプレゼント?

★12月25日
今、和ちゃんは炬燵に入りオレの隣でヨーグルトを食べている。食べながら、
「私ぐらい、おカネを持ってねえ人はおらんよ。一銭も持たせてもろうてねんじゃから」
いつもの決まり文句を発しながら、なにやら心配事をしている。心配事が泉のごとく湧き出てくる。大変なことだ。
今朝、和ちゃんは大失敗をした。お茶を炬燵布団にぶちまけてしまった。最近、朝食はパンにしているのだけれど、パンをこぼすので新聞紙を置いている。その新聞紙を置いている上にコップを置いていて、新聞紙を引っ張った途端にコップも倒れた。布団はビショ。新聞紙の上にコップは置かないよう、毎回言ってきたのだけどやってしまった。
「アホウ! ワシの言うことをちゃんと聞きょうらんからじゃがな? 炬燵から出て、そこえ立っとけえ」
「ハイ」
オレは雑巾でその辺りを拭きながら情けなくなる。オレ自身に。
10分後。オレは和ちゃんを後ろから抱きしめてお尻をモゾモゾ。
「慰めてくれんでも私が悪いんじゃから」
和ちゃんはヒョッとして“良性アルツハイマー”ではないのだろうか? 人間が円くなった。

★12月26日
寒波襲来とか。確かに寒い。しかし、和ちゃんは元気に出陣。今期、初めてマフラーをさせた。ちゃんと持って帰るかな?
ところで昨日、和ちゃんのパンツにちょっぴりウンコが付着していた。消化器機能はいいらしく、ウンコもなかなか羨ましくなるようなのが出ている。和ちゃんからの報告では。切れのいいウンコは“紙いらず”とも表現されているけど、和ちゃんもそれのようだ。ただ、2.3回は拭くらしい。
で、オレは洗濯機に投げ入れる前、その付着物を指先で弾いた。ポロリと落ち、あとは水洗いして洗濯機へ。でもなあ、和ちゃんの“ちょっぴりウンコ”が可愛く見えてきたなあ。

★12月27日
「なんしょんならクソババアー! 裸足やこうでウロウロすなアホウ。ちゃんと靴下はけー。ちいたあ考えホンマ。どれだけワシが気を使ようるか分からんのか?」
仕方がない。もう、どうにもならない。怒鳴り上げた方が、オレのストレスと和ちゃんの悲しみを足して割ると二人のためにはいい。二人で生きて行くために。我慢ばかりしてられない。もっとも、瞬時にそこまで考慮していたわけではないけれど。
しかし、この冬一番という寒さの中、裸足で床の上を歩かれてはかなわない。オレは、和ちゃんに風邪をひかせないために努力しているのに。
今、和ちゃんは隣で“みのもんた”の人生相談を見ている。オレが相談したいくらいだ。
と書いてしまったけれど、和ちゃん....
アッ!! また和ちゃんが針をどこかにやってしまった。ハーーーア。しんどいなあ。
でもなあ? この日記を記しているHPはもうじき地方紙で紹介されていることになってるのに、こんなことまで書いてしまってるなあ。

ps
午後2時。和ちゃんの高らかな笑い声が響いている。和ちゃんが凛としている頃、一度ケンカをしてしまうと一週間以上も口をきかないことも度々だった。今の和ちゃんに、“憎しみ”“恨み”“見栄”等々はないような気がする。
そして今、和ちゃんとオレは、炬燵の中で足をぶつけあっている。幸せそうだ。

★12月28日
「いつぞやはJRの中で失礼致しました。お母様をお大切に、どうぞ良いお年をお迎えになって下さい。お留守の様でしたので置かせて頂きます。走り書きで申し訳ございません。12.27●●」
昨日、玄関に高級和菓子とこのメッセージが置かれていた。●●の箇所は姓が記されており、オレは彼女の姓を初めて知った。彼女とは、9月27日の日記に記したAさんだ。わざわざ我が家を探して出向いて来てくれたのだ。
A さん、ありがとうございました。

★12月29日
今、コープから帰ってきた。午前11時ジャスト。和ちゃんと炬燵に足を突っ込んでいる。和ちゃんのデイサービスが今日から年末・年始六日間の休みに入るので和ちゃんは冬休み。六日間、和ちゃんと四六時中、顔を付き合わせていなければならない。いったい、どうなるのだろう? しかし、今は隣でゴソゴソと楽しそうにやっている。平和だ。
ところで昨日、オレは岡山に出ていた。ギヤラリー・グロスで蜂谷師匠とコーヒーを飲んだ。師匠からは高級コニャックを頂き、少し前には師匠が以前愛用していた皮ジャンまでもらっている。オレの事情を良く知っていてくれる。ありがたいことだ。
でもなあ? オレは師匠に質問した。
「自由はいい??」
師匠は今、なかなかノリに乗っている。仕事を含めいろんな意味で。ステレオタイプの表現だけれど“自由を謳歌”しているように見える。
オレは逆に束縛状態。どうにも動きがとれない。で、先の質問は、考えようによっては嫉妬からの嫌みになってしまう。反省。これがオレの人生だから。
JRで西大寺に帰った。駅近くに病院がある。コープで買い物をするにはこの病院の前を通らなければならない。病院前。オレは出会った。そして目が合った。両手に老人用紙オムツの束を持って病院に入る中年女性と。オレは思った。オレもオヤジを介護しているとき、年末・年始を病院内に泊まりこんでいたのだから。
「あの中年女性はワシを見てどう思うたかのお? 『お気楽じゃなあ!』ゆうて思われたかもしれんのお」
重荷を背負って戦っている人は多い。皆、オレみたいに口にしないだけかも?
 六日間。踏ん張ろう!!

★12月30日
12月30日。今日は和ちゃん生誕の日。誕生日。昭和1年生まれで76歳になった。
「和ちゃん。誕生日オメデトウ」
といっても、和ちゃんにその記憶はない。普段と変わらない日が過ぎている。昨日も誕生日については教えたのだけれど、年末・年始という季節感も判断できてない様子。
特別な誕生プレゼントなどない。カネもない。ただ、今日一日だけは、どんなことがあっても怒らないと決めている。これが、オレから和ちゃんへのプレゼント。一緒に笑っていよう。
さて、今日は冬休みラウンド2。今日はそこそこ暖かそうなので髪でも洗ってやろうかな?
今日と明日の昼食は“そば”だ。そろそろ作ろう。

★12月31日 大晦日
いつもどおりコープに買い物に行ってきた。和ちゃんの足取りはシッカリしている。
さて昨日、決意どうり怒ることはなかった。ただし、一言だけ瞬時に飛び出した。
「アホウ!」
なぜか? 昨日は午後からも両備プラッツに買い物にでた。家から出ようと和ちゃんが靴を履く体勢になったとき、和ちゃんはまず手袋を足先に入れようとしだした。その時、途端に“アホウ”が飛び出した。もっとも、二人共に大笑い。オレもそこそこ慣れてきた。
午後、従姉妹の貴美子が花を持ってきてくれた。和ちゃんは花を上手に花瓶に挿す。頭で考えるというより、身体で覚えているのかもしれない。身体で覚えていることは忘れないのかもしれない?
とにかく、一日中笑って過ごした和ちゃん76歳の誕生日だった。
今日はラウンド3。とりあえず、まだまだオレには余裕がありそうだ。一方、和ちゃんに大晦日の認識はない。
明日から新年か! オレにもあまり関係ないな。

★2003 元旦
午前7時過ぎ。和ちゃんと一緒に、南側の窓から見える上寺山後方から昇る初日の出を観た。勢いよく眩しい。
「和ちゃん、きれいなのお!」
「わたしゃ、こんなん観るん初めてよ。スゴイナア」
笑わせてくれる。でも、なんか幸せな気分でもある。
昨日の午後、ホームページにアップしてから散歩に出た。吉井川沿いを歩きながら和ちゃんが言う。
「私の脚の訓練のために悪いなあ。ありがとう」
今日で和ちゃんの冬休みもラウンド4に入った。想像していたより疲れは少ない。和ちゃんに感謝の気持ちがあるからかもしれない。
今年、オレに特別な計画はない。計画できない。ただ、和ちゃんの良きサポーターになりきることだけ。
もっとも、アルツハイマーというものを研究しようとは考えているけど。
でもなあ、これからいったいどうなっていくんだろう? スペイン語で例えれば、
『マニャーナ・セラー・オートロディア』

★1月2日
元日の昨日、一歩も家から出ることもなく過ごした。まあ、年の初めとしてはいい出足のような気がした。
蜂谷師匠からも、和ちゃんとの写真が送られてきた。オレもなかなかシブク写っている。
今日を含めてあと二日で和ちゃんはデイサービスへ出陣。べつに追い出すわけではないけれど、正直一人になりたい。和ちゃんのことは大好きなのだけれど。
でも、和ちゃんは元気だなあ!

★1月3日
いよいよ和ちゃんの冬休みも今日で終了。つまり今日はラウンド6だ。オレもそんなにダメージはない。年末・年始の雰囲気を感じることはほとんどなかったけれど、和ちゃんはたくさん笑った。これで良かったと思う。オレも結構楽しめた。やはり愛おしい。
ところで昨日、両備プラッツに買い物に行く途中、西大寺観音院に初詣した。和ちゃんとオレは10円づつを賽銭箱に投げ入れる。
オレは、和ちゃんと仲良しでいられるようお願い。和ちゃんは?
「“かどうあんぜん”を頼んだんじゃが」
「“かどうあんぜん”ゆうなあ、どういう意味なら?」
「私とあんた。それから家の中にいろんな人がおるが。皆の安全を頼んだんじゃが」
“かどうあんぜん”。漢字にすると“家同安全”とでもなるのかな? しかし、和ちゃんはやはり、この家にオレと和ちゃん以外にも数人の人間がいると確信している。オレが何人にも変身してしまうのだろう?
今日は小雨が降っているのでオレ一人でプラッツに行って来た。一人。気を使わないというのがこれほど自由なものか! とも思った。逆に、幾分の淋しさも漂う。
プラッツから帰宅早々、直ぐにコーヒーを入れて和ちゃんに献上。

★1月4日
今、午前9時。沖縄の女性にメールを書き終えたばかり。和ちゃんがデイサービスに出掛けたのでノンビリと書けた。とりあえず開放感に浸っている。
しかしなあ! と思う。昨日、和ちゃんの髪を洗った。というのも、なぜかキレイにして今日、デイサービスに送り出したくなったからだ。新年早々の出陣だから、他人様に笑われたくない、という気持ちがオレにはあった。なんか、和ちゃんの父兄にでもなったような?
4時半には、和ちゃんは帰ってくる。それまで寝てよう。和ちゃんと一緒に過ごしてる部屋もゴミまみれだけど(今パソコンに向かってる部屋)、掃除なんかする気になれない。
そろそろヘルパーさんにお願いするかなあ? でも、オレたちの環境下では却下かな?

★1月5日
今日、山陽新聞社会面にオレのホームページ記事が掲載された。ただ、和ちゃんには知らせていない。知らせて見せると混乱する恐れがあるからだ。
というのも、以前、オレは和ちゃんが入浴中の写真を撮った。オレはオレで写真を撮り続けている。で、入浴中の写真は和ちゃんに見せた。特別なモノではない。湯船に浸かっているところだ。ところが、和ちゃんは時々混乱する。
「今日あっち(デイサービス)へ行っとるときに、私の裸の写真がばらまかれとったんよ。そういやあ、誰かが私がお風呂入っとるときに写真撮ったからなあ。風がわりいから返してもらわんといけん。誰が撮ったかあんた知らん?」
しかし、新聞掲載の反響は大きかった。
今、和ちゃんと一緒に炬燵に入っている。これから和ちゃんの入れ歯をとりにいく。入れ歯洗浄剤に浸けてあるからだ。和ちゃんの入れ歯が外れている顔はちょっと恐い。歯ブラシはスヌーピー模様だけど。

★1月6日
今日は一緒にコープへ行ってきた。いつもどおりコーヒーを注文。コーヒーがきた。和ちゃんがなかなか飲もうとしない。
「どしたんなら。飲まんのか?」
「どうしょうかと思よんじゃ。飲んだら、また叱られるかもしれんから?」
和ちゃんは和ちゃんなりに悩んでいる。というのも今朝、朝食でパンを食べているとき、あまりにも炬燵布団の上にパンをこぼすので怒ってしまっていた。
しかし、ノビノビアルツハイマーを実践するのは人間業では無理なのでは? オレの場合、それはあまりにも苦行だ。

★1月7日
久々に岡山まで出てきた。といっても、市民病院へ高血圧症と自律神経失調症の薬をもらいに出掛けただけ。時間が少々あまったので寄りたい所もあったけど、4時半には和ちゃんがご帰宅。少し休息も欲しい。
赤穂線の都合もあり、グロスでコーヒーだけ飲んで帰宅。シビレル人生。このまま和ちゃんのサポーターで終了するのでしょうか?
 考えても仕方ないことだけど、なんかなあ!
でもなあ、和ちゃんは今日も元気よく、
「帰りましたー」
と気持ちのいい声で帰宅するだろうし、あの声を聞くとオレは義務と責任と情の人になってしまうはずだし。考えるのヤーメタ。

★1月8日
昨夜、高校時代の友人から電話があった。クラス会をするので野田もどうか? ということだった。もちろん友人はオレの事情を認知しているので、たぶん参加できないだろう、ということを前提に電話してきた。
夜の参加はやはり無理だ。確かにデイサービスには介護保険対象外時間として預かってはもらえる。しかし高い。百歩譲って預かってもらってクラス会に参加したとしても、アルコール類は飲めない。二日酔いで和ちゃんの世話などできない。クラス会に寄れば、ハメを外すこと間違いない。アウト。
今朝は1時間半ほど、買い物を含めウロウロしてきた。百円ショップのダイソーで、和ちゃんが無くすばかりするヘアピンを買った。
「やあー、ぎょうさんあるなあ! ありがとう」
今日もオレの好きな和ちゃんの笑顔が拝めた。とりあえず、これでいい。

★1月9日
今朝、デイサービス出陣前に和ちゃんが歯磨きをしているとき、和ちゃんがオレに言った。
「今日は、まだ怒られてないがなあ?」
デイサービスの日の朝は少々慌ただしい。短い時間内でコンパクトにやるべき事を詰め込まないといけない。オレはイライラしている。本来、そんな必要はないのだけれど。でも、部分入れ歯も磨いてやらないと口臭がするしで、どうしても気持ちははやる。和ちゃんが歯磨きを終え語る。
「私の世話をしてくれる人で一人、ものすごう怒る人がおるんじゃ。ちょっと間違えたら『オドリャーなんしょんならー。ちゃんとせえ!』言うたりして。あねえ言われたら、ドキドキしてまた間違えて。あんたみてえに優しゅうしてくれたら間違わんのじゃけどなあホンマ。あんたが一番好きじゃ」
今朝、和ちゃんはいつも以上に元気良くデイサービスに出発した。
怒る人も優しい人もオレ。和ちゃんの頭の中は混線しているけど、なんだか上手く仕切り線が敷かれているみたいだ。怒るオレと優しいオレは別人なんだから。
アルツハイマーも奥が深い?

★1月10日
インフルエンザが例年より早く流行始めているらしい。風邪かインフルエンザが判断できないけれど、確かにマスク姿の人と接することも多い。
和ちゃんはインフルエンザの予防接種はしてるけど、これも当たり外れがあり型が違えばアウトということ。オレも接種しとこうと考えたけど、一般人は4000円。オレには高い。
で、オレがインフルエンザに感染しても和ちゃんが感染しても参ってしまうので、昨日から、帰宅後に“うがい”をすることにした。一番いいのは加湿器らしいけど、購入してみようかな?
なんか、考えなければならないことの連続だ。
話は変わるけど、今、県内にもグループホームの立ち上げが増えている。内容を聞くと、費用対効果が先行したビジネスライクのホームが多いとのこと。これは複数人から確認。
久々に、ちょっと覗きに行ってみようかな?

★1月11日
今、3本のメールを書き終えて日記を書きはじめた。今日は少し暖かいかな?
さて、和ちゃんは今日も元気良くデイサービスに出陣。ただ、手提げバックを一つ多めに持って行った。和ちゃんには、偽ディオールの白い可愛いバックがあるのだけれど、和ちゃんにも言い分がある。
「皆、二つ三つぶらさげてきょうるよ。私じゃあゆうたって、バックの二つ三つ持っとんじゃから一つしか持っとらんと思われたら風が悪いが!!」
結局、和ちゃんは必要のない手提げバックをぶらさげてデイサービスへ向かった。いろいろ彼女なりに悩みも深いのだろう?
 今日はデイサービスで、足の爪を切ってくれるよう頼んでおいた。昨日、髪を洗った後、和ちゃんの足の爪の長いこと。オレでは手に負えない。
しかし、和ちゃんの髪を洗い終えると疲労感。オレは結局、風呂に入るのがめんどくさくなり3日間入ってない。なんか哀れだなあオレって。

★1月12日
我が家は借家。この借家に入居したのはオレが中学1年生のとき。つまり入居して35年近くになるのだけれど、この借家が建てられたのはもっと以前。正直、和ちゃんではないけれど、いろんな箇所にガタがきている。もちろん雨漏りもあり、かなり強い台風でも来れば倒壊とまではいかないまでも、屋根が飛ぶ可能性はあると思う。
で、昨夕、借家の大家さんからこの家の解体の話がでた。仕方のないことだと思う。オレも、以前からいつ引っ越そうか? 考えなかったわけではない。ただ大家さんからの問い掛けで吹っ切れた。話し合い、大家さんも和ちゃんのアルツハイマーに気を使ってくれて来年いっぱい解体を待ってくれることになった。和ちゃんには知らせていない。知らせたら混乱する。
来年いっぱいということは、丸2年ある。和ちゃんのアルツハイマーの進み具合も考慮して、今年はできるだけ和ちゃんとコミュニケーションをとりたい。来年には今みたいな状況ではないはずだ?
アルツハイマーの和ちゃんを抱えて借家・アパートはあるか? あったとしても、和ちゃんの病気の進み具合では夜に奇声を発したりすることも想像できるし、となると隣と距離がある一軒家がいいのか?
2年ある。いろんな家具も整理しながら、ゆっくり考え相談する時間はある。
和ちゃんを施設に預ける気は全くないのだから。
今、炬燵の中で和ちゃんの足とオレの足が絡まり和ちゃんが微笑んでいる。今日も穏やかな一日にしたい。

★1月13日
午前8時。朝食を一緒に食べ、といってもパンとお茶だけど、オレは久々に送られてきたホームページに掲載している“外国人ハウス物語”のアップの準備をし終えた。和ちゃんは、NHKの連続テレビ小説“まんてん”まで炬燵の中に潜りこむとのこと。
今朝は7時前からゴソゴソ。久々に和ちゃんに算数を試してみる。1〜100までの足し算はOK。しかし引き算はアウト。ただ、100−5は悩みながらも95と答えられた。
また1日が始まる。

★1月14日
和ちゃんが昨日ダウンした。
食事が入らず3度吐いた。オレは和ちゃんの背中をさすりながら、小さな背中をさすりながら過去の親不孝を心でわびた。
昨夜いろんなことを考えた。ただ、元気になって欲しい。あの笑顔が見たい。
今日はこれから協立病院だ。少し和ちゃんにはシンドイかもしれないけど、オレが側にいる。守らなければ。

★1月15日
まずは、“在宅介護サービス・サルピス”の皆さんに感謝を伝えたい。
無理なお願いばかりをして、本当にありがとうございました。
さて、今は1月14日の午後3時20分。これまでの出来事を忘れないために前倒しして記している。
和ちゃんは昨日、3度吐いた。まず最初は、かなり濁ったタンが出た。オレはそれをワンカップに採取した。肺の病気かもしれない? と考えたからだ。
2度目は朝食で食べたブルーベリーのパンが消化されたモノ。3度目は、夕方飲んだお茶を吐きだした。3度目の場合、横に向いて寝ている状態でそのまま吐きだし、布団と和ちゃんの着ている服の右肩部分がビッショリと濡れた。和ちゃんはその後なにも口にせず、一晩を床の中で過ごした。
といってもトイレには行く。頭がフラフラするというのでオレも一緒して、オシッコしているときは後方から支える。最初のときはウンコが出そうと言いながらプッとオナラを一発。そしてジョジョジョジョーとオシッコを噴出。オシッコは勢いがあった。そんなことを夜中に何度か。
和ちゃんは先にも記したように、昼も夜も食べなかった。オヤジを介護した最初も、3日間なにも食べられないところから始まっていた。
オレは和ちゃんがアルツハイマーでお世話になっている林病院のHPを開いた。内科があった。即、電話。しかし、和ちゃんの症状を説明すると内科のある総合病院の方がいいと指示を受けた。林病院の内科は協立から出向いて来ていることも知らされた。
そして協立に電話。初診は11時までに、ということだった。
“在宅介護サービス・サルピス”に電話。迎えが10時半頃なら? という回答。オレは身体の空いてる人間を探す。なかなかいない。数分後、“在宅介護サービス・サルピス”の清久さんから9時前後に行けるとの知らせ。
ホッ!! 心底ありがたかった。
夜、オレはいろいろ考えた。今までの和ちゃんとのことを。和ちゃんの寝顔を観ながら。そして親不孝の数々を。大袈裟かもしれないけれど、このまま死んでしまうのでは? とまで想像。しかし、和ちゃんは寝息を唸らせながら本格的に眠っている。すこし安堵。
そして今日、協立病院へ。こちらがインフルエンザを患ってしまうのでは? というぐらいマスク姿の外来患者の数。オレと和ちゃんもマスク着用。防御策。
血液検査。肺のレントゲン。一切異常なし。熱もなく、検査を受けているころにはコーヒーが飲みたいと言い出した。
そして今、和ちゃんはコーヒーを飲み、みかんを二つ食べ終えて炬燵で横になっている。6時には、肉うどんで夕食をするそうだ。
「昨日は、ようしてくださった人がおってなあ! ありがたかったんよ」
コーヒーを飲みながら、和ちゃんはオレに言った。今、和ちゃんの側にいるオレは、昨日側にいたオレとは別人になっている。
そんなことはどうでもいい。しっかりオレの作った肉うどんを食べて欲しい。
ただし、オレはスコブル疲れた。アルツハイマーの和ちゃんを総合病院で診察を受けさせるということに!

★1月16日
和ちゃんは、ほぼ復活した。3度の食事もまだ以前ほどではないものの、比較して80パーセントは食べる。今朝、久々に顔を合わせたデイサービスの谷口さんに手を取られ元気に出陣。
今、オレはささやかに孤独の快楽に浸っている。
しかし、オレはオロオロした。確かに、近所に“掛かり付け医”が必要だ。ただ、痴呆を理解してくれる医師でないとダメ。穏やかな和ちゃんだけど、好き嫌いはしっかりある。アルツハイマーを宣告される以前から、つまり和ちゃんのことを相談するときから優しい人ばかりに出会えてきた。今までは人間関係、順調だった。
健生園の人たち。医師、ケアマネジャー、デイサービス、そして在宅介護サービス・サルピスの人たち。感謝してます。でも、まだまだこれからサポートの手が必要なようだ。もっとも、和ちゃん好みを探すのはオレの役割だけど。
でもなあ、本当に痴呆の人を一般病院で診断さすというのは疲れる。とにかく頭を下げる回数が多い。
「アルツハイマーがありますのでヨロシクお願いします」
行くところ行くところで断らなければならない。和ちゃんと散歩してても、珍しいモノに手を触れようとする。先日などはベンツに触った。オレは一瞬、血の気が引いた。
まあ、良くも悪くも、思い出づくりには事欠かないのだけれど。
今日、一日中寝て過ごしたいけどダメだ。

★1月17日
なんか疲れている。オレが!
昨日は動きすぎたかな? デオデオにフロッピーディスクの修理に出、原尾島の在宅介護サービス・サルピスにお礼に寄り、歩いて岡山駅まで。途中、グロスでコーヒーを飲み、大黒堂で薬を買った。コープで買い物をし、和ちゃんがデイサービスから帰宅後、洗髪。そして、仏壇の部屋を掃除し洗濯。
ちょっとシンドイ。元気になった和ちゃんに話しかけられても騒音に聞こえる。身勝手なものだ。
ところで、和ちゃんは髪をカットした。少し刈り上げ気味だが、可愛い。

★1月18日
結局、和ちゃんの嘔吐の原因はなんだったのか不明という現実だけれど、今朝はジャムパンを1個食べお茶もしっかり飲み完全復活の模様。
しかし、こうなると口の方が滑らかになり会話に疲れる。いろいろと心配事を相談してくるのだが、回答を録音して質問する度にスイッチオンにしたいくらいだ。基本的には、おカネに関する心配事が多い。盗られたというのではなく、カネの持ち合わせがないという悩み。
ところで、昨日のオレはやはり疲れており、和ちゃんにかなり厳しく言った。些細なトンチンカンな事ばかりの連続で、観て見ぬ振りを通せばなんてことはないのだけれど、後始末をするのはオレ。どうしてもガナッテしまう。
「ティッシュペーパーを置きっぱなしにすなゆうて何時も言ようるじゃろうが。せえに、なんでお茶を飲むコップの中にヘアピンを入れたりしとくんなら。アホウ!! ズボンの上にズボン下やこう履くなホンマに。ええ加減にしてくれんとワシがストレスで倒れるで!」
「スミマセン。気おつけます」
「気おつけます? その言葉。今までに何百編言うた? もう聞き飽きたがなオオッ!!」
「大きな声を出して、ご近所に風が悪が!」
「偉おなったもんじゃのお? 『風が悪い?』。ほんなら出て行きゃあええがな。ワシャア困らんで」
「わ・た・く・し、アルツハイマーなので出ていけません。あんたに引っ付いています」
以前ならこんなケンカをしてしまうと最低で2日、悪くすると1週間は互いに口を聞かなかった。ところが今は違う。和ちゃんのモード変換はスコブル速い。5分も必要としない。関係を修復するのに。オレは和ちゃんに抱き寄りオッパイを揉む。
「和ちゃんオッパイねんか?」
「わたしゃもうオンナじゃねえからなあ。キャー!! やめてーーん」
ケラケラ笑いながら逆襲してくる。アルツハイマーの特徴、悪い面が強調されるが、和ちゃんとオレの関係ではしこりが残らない。ある意味でアルツハイマーのお陰かもしれない。
さて、今朝はデイサービス出陣前、和ちゃんは玄関で足踏みしていた。両腕も若干振って。
「和ちゃん、なんしょんなら?」
「あの人がやりょったが(駅伝で前走者を待っている次走者)。私も今、待っとるからなあ」
オレは今日これから、どうしようかなあ?

★1月19日
火・木・土曜の午後4時半頃。デイサービス送迎の車が停まり、和ちゃんが玄関に向かってくるのが分かる。送迎してくれる谷口さんと楽しそうにケラケラ笑いながら。和ちゃんは谷口さんのことがとても好きらしく、決して谷口さんの悪口は言わない。玄関を開ける。
「ただいまー」
元気のいい声が響く。
「おかえり」
当然だけれど、オレは谷口さんにもお礼を言う。
「ありがとうございました」
和ちゃんはいつも名残惜しそうに谷口さんとお別れする。仕切なおして、谷口さんの車を見送りに行くこともある。いつの頃からか、こんな光景が我が家に定着した。
ところで昨日は、やはりコープへの買い物だけで和ちゃんの帰宅を待った。和ちゃんとオレが顔を付き合わせてる部屋には掃除機を唸らせたけれど。
和ちゃんは昨日、デイサービスの皆とイルカを見に行ったと言う。デイサービスからの連絡帳にも記されておりオレは少々驚いている。
「今日、イルカ見に行ったんよ」
風呂で身体を洗っているときに、楽しそうにこう報告してくれたからだ。学習能力はほぼアウトだけど、記憶力はまだまだOKのようだ。
今、和ちゃんがウンコから戻ってきた。
「出たか?」
「ウーン? 今日は栗の大きさのが一つじゃな。あんなんが道に落ちとったら子供が食べるよ」

★1月20日
今日は月に一回の林病院で診察を受ける日。特別、毎月々々通わなくてもいいのだけれど、担当の林先生が優しいので通わせている。
ただ、今朝の場合、どうも良く記憶にないのだけれど、少し前手術の話をしたか聞いてきたかで?
「今日はお腹を切るんじゃろう? 行かん」
と言い切った。
朝というのは、どうもイライラする。
「誰のおかげでちゃんとした生活ができゅうると思うとんなら。ゴチャゴチャ言わんと、ワシの言うことを聞きょうりゃえんじゃ。自分のこともできんくせして」
怒鳴ってしまった!!
 林病院で診察を済ませ、原尾島のデオデオに出掛けた。和ちゃんにいろんな家電製品の最新器を見せたかった。で、結局、加湿器を買った。もっとも、2980円の一番安いのにしたのだけど。
その後、在宅介護サービス・サルピスに寄り、松平さんと雑談。西大寺まで送ってもらい、両備プラッツで昼食を済ませて帰宅した。今、和ちゃんは炬燵に潜り込んでテレビを観ている。
お疲れさま。

★1月21日
昨日、在宅介護サービス・サルピスに寄ったときのこと。和ちゃんは、ここの所長である松平さんに出会うなり、
「お加減、いかがですか?」
と声を掛けた。松平さんは岡山大学医学部在籍中、柔道部の練習試合で頸髄損傷となったものの今では完璧に社会復帰したファイトマンだ。松平さんは首から下の感覚はなく、普段はいつも電動車椅子上の人。
そういう事情から、和ちゃんもそのように声を掛けたのだろうけど、アルツハイマーの和ちゃんからのご機嫌伺いに松平さんもビックリしたかも?
しかし、今日、今朝も空が高くシミジミ青い。和ちゃんはデイサービスへ。オレもちょっと出掛けてみるか!

★1月22日
午前8時10分。和ちゃんとテレビに向かっている。NHKテレビの“まんてん”が始まるのを待っているのだけれど、和ちゃんがこちらを見てニコッと笑う。この顔はいただけない。今、入れ歯洗浄剤に入れ歯を浸けており、笑うとシワクチャで顔が歪んでしまう。気持ちのいいものではない。そろそろ“まんてん”が始まるので一休み。
“まんてん”を見終え、入れ歯を和ちゃんにはめた。ときどき自分でできなくなるが、今日はちゃんと自分ではめることができた。この顔ならいい。OK!!
 ところで、新聞掲載された後、多数のメールをいただいた。励ましの声、同調の声等々。
で、オレの体調を考えての配慮から、これから10年、20年の介護もありえるのだから、ときにはショートステイも利用されては? とのメールもいただいた。ありがとうございます。
確かにオレは疲れてる。和ちゃんは最低二日に一回は風呂に入るけれど、オレは今、風呂に入るのもおっくうで三日に一回のペース。今日もなんとなく入る気がしなく、もし入らないと4日間入らないことになる。まあ、冬だからいいのだけれど、身体のあちこちは痒くなってきている。
ただなあ、オレは今まで老人介護を中心に取材し、介護職に友人・知人も多い。彼等の声からも、オレが取材した範疇でも、痴呆とショートステイはかみあわないケースが多い。つまり、痴呆にショートステイは良い方向に向かわないのだ。あくまでもオレの知るケース内での話だけれど。
とはいっても考える。余裕のあるうちに和ちゃんに頑張ってもらってショートに行ってもらう。オレは臨界点から遠ざかる。ギリギリまでオレが踏ん張ってからショートに預ける。それまでに臨界点を超えてしまうかもしれない。臨界点を超えるということは、虐待ということだ。
正直、いろいろ考えるし、余所のHPも覗いてみる。
ショートステイ。理解も納得も、いずれお世話になることになるとも思う。しかし、和ちゃんがショートステイ先で混乱している様子を想像すると、ショートステイは範疇外になる。
オレにも良心がある。良心とはやっかいなものだ。難しい?

★1月23日
昨日は和ちゃんの髪を洗った。髪を洗う日は身体は洗わない。ただ、下だけはしっかり洗う。石鹸でゴシゴシ。肛門に小さなカスがへばりついている。ゴシゴシ。薄いウンコの襞のようなものが剥がれた。そういえば今朝、コープへ買い物へ行く途中、和ちゃんが言っていた。
「今日はなあ、こんなんが出たんよ」
親指と人差し指では1センチほど足りないほどの丸の形を作りながら。長さは10センチぐらいか? しかし、和ちゃんは気持ちのいいウンコをする。偉い!!
とはいえ、オレはふしだらな気持ちになる。肛門と性器をゴシゴシやってるのだから。
「これがオレの彼女だったらなあ!」
ところで、オレもなんとか踏ん張って風呂に入った。今日も入れば溜まりかけている垢も落ちるのだろうけど、どちらかといえば、これであと二日入らないですむというのが本音。
常識も非常識もゴチャマゼになってきてるなあ?

★1月24日
「ただいまー」
昨日夕方、デイサービスから元気良く和ちゃんは帰宅した。昨日オレはなにやら疲れており、昼3時間ほど寝ていた。
しかし、この声と笑顔を見てオレにも元気が少々。そして風呂を沸かした。風呂でもいろいろ話をした。最近は楽しいことばりらしい。
今、“まんてん”を見終えたばかり。今日は、菜の花でも花屋さんで買おうかな? 和ちゃんと一緒に!

★1月25日
昨日、菜の花を買った。花屋さんで100円。
しかし、和ちゃんはすごく喜んだ。おカネを全く持っていないと心底から思っている和ちゃんには大金だ。花を時々買ってはやりたいのだけれど、やはり高い。
ただ、オレは和ちゃんに対して腹立つことが頻繁にある。でも、和ちゃんの笑顔を見ると、なにか、いつか良いことが起こるような気にもなってくる。
おかしな話だけれど、和ちゃんが時々“天使”に見えてくるから不思議だ。顔はシワクチャだけど。

★1月26日
昨日デイサービスに向かう前、オレは和ちゃんに怒り心頭した。
「ハーーア」
和ちゃんは溜め息をついた。朝食をさせ、入れ歯を磨き、無い無いと言うヘアピンを探し、出陣の服を着せ、いざデイサービスという直前にだ。
「ハーーア」
この溜め息をつくと、オレは子供の頃、和ちゃんから、
「キャクソが悪うなる。人前で溜め息やこうつかれな」
と、頻繁に叱られたものだ。
「アーーア。一日の始まりからこれか。行きとうねんなら行くな。その代わり、家で一人留守番で。出来るんか? 朝一番から『ハーーア』やこう言うな。キャクソが悪うてかなわんがなホンマ!」
大声で怒鳴った。
ところが、玄関に出てみるとお迎えの谷口さんがいる。いつもより少し早い。全てを聞かれた。参った。
恥ずかしーーい。
和ちゃんがデイサービスからご帰宅。オレは玄関から出て迎える。谷口さんと一緒。イルカを観に行った日の写真をデコレーションしたものを手に。
「和ちゃん。今朝、でえれえ叱られたんじゃて?」
「そうなんよ。あんたの弟さんに叱られてなあ」
「しじゃあから言うといたで。『オドリャー!! 和ちゃん叱ったらワシがこらえんでコリャー』ゆうて」
「兄弟喧嘩せんようにな。私が悪かったんじゃからホンマ」
オレは和ちゃんには悪いけど、オモイッキリ笑った。

★1月27日
「これから20年つづく介護です」
メールを頂いた中の文面。そうだと思う。
しかし、和ちゃんは今76歳。20年続けると96歳。オレは66歳。アルツハイマー発症後、20年生きるということは無理だったと記憶するけれど、可能性が無いわけではない。
オレは正直、和ちゃんに日本人女性の平均年齢までは生きてもらいたいと思っている。約、あと10年。ウーーン? とはいえ、あと10年としてもオレは56歳になっている。今の生活を10年間。いや、日々悪化していく和ちゃんとの生活を10年間。
和ちゃんの消化器機能はほぼ万全。4キロは歩ける。体力だけなら平均年齢はクリアできるに違いない。先々を考えると、やはりオレの精神衛生に良くない。
昨日、プラッツでコーヒーを飲んでいるとき、和ちゃんが問うた。
「今日、私、行く日じゃった?」
デイサービスのことだ。
「今日と明日は休み。ワシと一緒じゃあ!」
ニコッと微笑んで一言。
「そりゃあええことコンペイトウ」

★1月28日
昨日は雨。和ちゃんは家から出ることもなくゴロゴロ。
昔取った杵柄で、新聞紙を梱包しまとめてもらった。



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