2月19日〜3月16日
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★2月19日
昨日はオレの47歳の誕生日だった。で、アルツハイマー日記を毎日読んでいただいている方から詩のプレゼントを頂戴したので、ここにキッチリと残しておきたい。
ありがとうございました。

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二度とない人生だから
一輪の花にも無限の愛を注いでいこう

二度とない人生だから
一羽の鳥の声にも無心に耳をかたむけていこう

二度とない人生だから
まず一番身近な者達にできるだけのことをしよう

まずしいけれど心豊かに接していこう

念ずれば花開く 念ずれば花開く

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“まず一番身近な者達にできるだけのことをしよう ”
そういえば、マザー・テレサも同様な事を言っていたような気がするなあ!
ところで昨日、オレはバスの中で突発的にウンコがしたくなり、腹の中でウンコを上げては下げの繰り返しを車中でやっていた。もちろん冷や汗をかきながら。
和ちゃんのことを思い出した。
「和ちゃんは、オレより少し、我慢ができなかったんだろうな。ゴメン」
スッキリさせた後、しみじみと反省した。

★2月20日
明日(2月20日)は、和ちゃんを送り出したらオレも直ぐに外出し、かなりフットワークを使用しなければならなくなりそう? なので、例のごとく19日の午後3時に書いている。
和ちゃんを風呂に入れ、オレも入って4日ぶりに髪を洗った。その後に洗濯をし干し終えて、今パソコンに向かっている。
午前中に買い物に一緒に行き、コーヒーを飲む代わりに春めいた花を買って帰った。和ちゃんは花が好きで、今でもキレイに活ける。今朝も貧相な玄関をバッチリ美しく華やかせた。身体で覚えているのだろう。
昼食はいつもの肉うどんで、そういえば今朝、オレは掃除もした。極安掃除機は悲鳴をあげ唸った!! こんな表現をすると、さすがにライター?
オレはいろいろと忙しい。とにかく、和ちゃんを一人にさせると寂しがるので、話し相手をする状況にいなければならない。考えてみれば、和ちゃんはいつも誰かといる。
「野田さん。お母さん、これから悪くなっていったら介護は大変ですよ」
心配・おせっかいをしてくれる人も少なくない。でもオレは思う。
“悪くなることを考えるより、いかに悪くさせないか”を。
ところで、オレの男前がかなりあやしくなってきている。髪が伸び、ヒゲも荒れ放題。形振り構わないのも限界か?
 顔が疲れてしまっている。また、丸刈りにでもするかな?
「そんな頭じゃ、一緒に歩けなーーい」
なんて不満を言うオンナ・おんな・女はいないし。チクショウ!!

★2月21日
昨日は予想通り、オレのフットワークが活躍した。軽快に! とはいかなかったけれど。しかし、雨が降ったと思えばスカッと晴れ渡り、かとおもえば“あられ”が落ちてきたり突風が吹いたり。なんと申しましょうか、アルツハイマー的な一日だったですね。
さて、オレはやはり本を出版することにした。吉備人出版のホームページに連載していた“岡山東商業高校野球部物語”を。これは、原稿用紙にして700枚ある。それを400枚分にスリム化し、誰でもが読める内容に推敲しなおさなければならない作業を開始する運びとなった。
ズーーーーート、原稿が宙に浮いていたのだけれど、野球部同輩からの声も強く一踏ん張りすることにした。和ちゃんの事ばかりのこの7ヶ月だったけれど、少し新風を入れよう。そして気分転換しよう。
夢ができた。過去に何冊か本は出版してるけど、これはオレの青春グラフティだ。過去のモノとは違う。3月中には、オレの作業は終了させたい。もっとも、和ちゃんが落ち着いてくれていたらという前提だけど。
その和ちゃん。この3月に、オレの友人が立ち上げるデイサービスセンターからお呼びがかかった。遊びに来て欲しいとのこと。ご指名。立ち上がったばかりで利用者さんもいないだろうから、練習がてら、というところだろうけど、こりゃあビジネスも可能かもしれない?
つまり、これから立ち上げようとする介護事業者(まだ不慣れ)に和ちゃんをレンタルし実習させる。アルツハイマー患者のレンタルサービス。
オレもかなり疲れてきたかな? でも、最近の介護事業者の噂を聞くと(勝手に皆が報告してくれる)、“なんでもあり”だから。
昨日朝、和ちゃんはゴミ捨てに行った。仕事をもらえるのが嬉しいらしく、オレの付き添いも拒否。一人で大丈夫と言う。もちろんオレは後方から見ているのだけど、自分にも何かができるというのは嬉しいらしい。誰でもそうかもしれないな。
和ちゃんは最近、とっても元気だ。昨夜の爆睡度も強烈だったし!!

★2月22日
22日午前8時50分。オレはウンコを出しきれないままに今、パソコンに向かっている。やはり、ウンコも旬の時に出してやらないと、どうも絞りきれないみたいだ?
なんでこうなったかを説明すれば、デイサービスのお迎えが15分ほど遅れた。8時20分前後が予定時刻なのだけれど、今日は35分。
でも、これは仕方ない。和ちゃんも突発的にトイレをもよおし、5分、10分、我が家の前で待機してもらうことがあるのだから。アルツハイマーのお年寄りをはじめ病気を抱えている利用者を送迎するのだから大変だ。感謝だけで、文句など言えようがない。
ただ、この待ち時間が結構疲れる。和ちゃんは連発して話しかけてくる。この連発攻撃に、真摯? に迎撃してやらないとご機嫌が悪い。
「あっ!! そうじゃ。ちゃんと私の名前、お父さんの名前、お母さんの名前を言えるようにしておかんと先生に質問されるかもしれん? ちょっと書いといてん」
「そんな質問されたら、『私、アルツハイマーじゃから分かりません』言うときゃあえんじゃ。100−5もできんくせに?」
「100−5=? 95じゃが」
「ありゃ? 分かるんか」
「子供じゃねんじゃからなあ」
時々、プッツンしている箇所が接続することがある。
さて、和ちゃんの新たな介護認定は要介護2だった。前と同じ。不謹慎な話だけれど、オレと和ちゃんだけの母子関係を考えると、今の状況より少し良くなってくれれば一番いい。昔のように凛とされたらケンカばかり。かといって悪化していくとオレの疲れも臨界点を超える。
あまりにも身勝手かな?

★2月23日
和ちゃんが階段から落ちた。最後の一段を踏み外して、スコーンと腰から落ちた。オレは2段後方からそれをモロに目視。
「ウワッ!!」
和ちゃんが唸っている。2、3分そのままの状態でいさせて、なんとか立たせた。オレはホームヘルパー2級を持っている。
しかし、ちゃんと電気を灯して階段から下ろせばよかった。もっとも、手摺りを付けていないのも悪いのだけれど、借家ということと、2年後には解体。それに、年齢にしては足腰はしっかりしているから安心はしていたのだけれど?
湿布薬を貼り、歯磨きをさせ2階へ上がらせた。なんとか自力で上がれ、トイレに行きたいというからトイレに一緒に入り、ちゃんとウンチングスタイルでオシッコを出すのを確認。ちゃんとペーパーで拭いている。腰が痛いと、ペーパーを下まで持っていけない。
まあ、軽い打ち身で済みそうだけれど、これでオレの側・前後で転倒するのは記憶にあるだけで5回目?
転倒は恐い。寝たきりへの入り口だ。ただ、徘徊老人の家族は、寝たきりになって欲しいと願っている人も多い。
今のところはなんともなさそうだけれど、明日、痛みが増すかもしれない。要注意!!
和ちゃんは今、布団の中から首を出してテレビを観ている。
「買い物の手伝いできんで悪いなあ」
今日はオレ一人でお買い物。本当は、一人の方が気楽でいいのだけれど、でも、なんだか淋しくもある。
オットー!! 和ちゃんが今、オレにウィンク飛ばした。凛としている頃は、絶対ありえない行動だ。アルツハイマーも悪いことばかりではない。かな?

★2月24日
和ちゃんの怪我が想像以上にひどかったようだ。昨日は、坐っていることさえ苦痛だったようで、確かに足首の腫れは半端ではなかった。腰も激痛。ただ、今日は昨日よりいいらしく、今は坐ってテレビを観ている。
とはいえ、昨夜はトイレに3回付き添い、後方から支えた。和式はこういうときキツイ。和ちゃんもオシッコした後、拭くのに手が届きずらいらしく顔をしかめながらのチャレンジ。しかし、昨夜は眠れなかった。
段々には良くなるだろうけど、今日、明日はつきっきりでいないとダメなようだ。

★2月25日
今朝一番で、操山在宅介護支援センターの長谷川さんにポータブルトイレを持ってきてもらった。購入したわけでも、介護保険を利用したわけでもない。支援センターで貸してくれるのを持ってきてもらった。時間的余裕がなく、直ぐに欲しかったからだ。以前に誰が使っていようが、しっかり消毒済みのはずだ。だいたい、オレたちはそんなヤワな神経ではない。借りている期間に関係なく500円。安い!!
和ちゃんの腰と足首は、考えていた以上に重傷らしい。とにかく足首の腫れはひかない。腰もかなり痛いらしく、ヨッコラショとウンチングスタイルになるのも一大事のように顔をしかめる。オレも後方から支えるのだけれど、怖がる。
和ちゃんを試しに抱き上げてみた。ビキッ♪♪ 腰にきた。和ちゃんは、わずか39キロしかないのに。オレもシッカリ運動不足。
和ちゃんは骨折かもしれない? 長谷川さんも和ちゃんの足首を見てビックリ。あまりに優しい声を掛けてくれるので和ちゃんの声が涙声に変わる。
明日は、協立病院の整形外科に行くことにした。在宅介護サービス・サルピスの越智さんに送迎してもらう手はずも整えた。
とりあえずは、明日レントゲン写真を撮ってもらい診断してもらってからのことだ。
しかし、ポータブルは楽でいい。洗う必要はあるが、消臭液もパワーアップしており部屋が臭うこともないとのこと。
ウーン。仕方ない。この世の終わりではないのだから。

★2月25日スペシャル
単刀直入に!!
今さっき、和ちゃんの性器を洗浄した。
和ちゃんの突発的なケガで、入浴の予定がくるい今日で5日間身体を洗えないことになる。そこで、和ちゃんの下をキレイにすることに発作的に実践した。
和ちゃんに上向きに寝てもらい、下半身はスッポンポン。股を開かせ、まずは洗浄綿で性器を拭う。そして、お湯に浸けてあるタオルを絞り、それで性器と肛門をピッカピカに。
とはいえ、和ちゃんの性器を大開帳でまざまざと見るのは初めて。でも、やはり和ちゃんの性器は“母親の性器”だった。オレの大好きな“オンナの性器”ではない。つまり、単なる排泄器官にすぎないのだ。
「和ちゃん、恥ずかしゅうねえか?」
「なんで?」
オレはなぜか猛烈に愉快になり大笑いした。
白い毛の混ざった陰毛に囲まれた性器。オレの生が、この世に第一歩を踏み出した真の故郷。
大事にしなければ!!

★2月26日
今朝、協立病院の整形外科で診察を受けてきた。結論から言えば、一番心配していた骨折はしていなかった。
腰と左足首のレントゲンを撮り、医師にアチコチ触ってもらい、骨折はしていないとの診断。レントゲンで見えない箇所にもしかしたら? という可能性が無くもないらしいけど、診断ではOKとのこと。1週間経過しても今同様であれば、もう一度受診しなければならない。
ただ、オレの素人判断からしても、身体の痛みは昨日がピークだったのでは? 足首の腫れはかなり良くなってきているし。
「和ちゃん。昨日と比べてどねえな痛みは?」
「目には見えんけどなあ? どねえゆうたらえんかなあ?」
アルツハイマーの和ちゃんと会話するのは“骨が折れる”。
しかし今日は、車椅子に乗せて病院内を移動したのだけれど、車椅子の講習を以前受けていたので役立った。ストッパー。下りはオレから後ろ向きに下りる。段差があれば、車椅子の前部を上げる。経験していないとなかなか分かりづらい。
和ちゃんは今、腰にコルセットと湿布。足首には湿布の上を包帯で固めている。
まあ、やれやれだ。
しかし、とにかく一人でトイレに行けるまでには回復して欲しい。
オレは疲れた。疲れている。疲れてしまった。

★2月27日
今日も和ちゃんはデイサービスはお休み。昨日、デイサービスの鹿村さんに電話を入れておいた。ただ想像するに、行ったとしてもデイサービス側にすれば負担は増える。今の和ちゃんであれば要介護2を上回り、3が妥当なはずだ。要介護3となると、利用料も増える。ここがポイント。介護者としては要介護2が望ましい。勝手すぎるかな? あくまでもこれはオレの想像で、今通わせてもらっているデイサービスは和ちゃんにはベストだと確信している。とにかく、帰宅したときには必ず、
「今日は面白かったんよ」
から始まる。
さて、オレは一昨日の夜考えていた。和ちゃんが爆睡している隣で。
もし骨折でもしていて入院ということにでもなれば、オレは必ず付き添わなければならない。アルツハイマー患者が一般総合病院に入院するわけだから尋常ではないはずだ。まあ、骨折だから点滴の管を抜くとかいう心配はないけれど、たちまち混乱すること必至。ポータブルトイレだけを例にとっても、オシッコがなかなか出てこない。ポータブルの前で、オシッコをするのにズボンを下げようとしない。挙げ句の果てに、オレは爆発する。転落してからオレは睡眠不足。
「アホウ!! 小便するのにズボン脱がんでどねえするんなら。小便ができよんになったら施設へ行かんといけんので。優しい人ばあじゃねんじゃからのおホンマ! アルツハイマーはアルツハイマーなりに努力せえクソアホウ!!」
オレはひどく醜い人間だと思う。でも、その一瞬の刹那に敗北してしまう。
ただ、こんな日は絶対に、眠る前に和ちゃんと握手する。そして謝る。安心してか? 和ちゃんは爆睡する。和ちゃんは本当に眠りが深く、夢などほとんど見ないらしい?
話が逸れたが、病院の大部屋のベッド下に寝袋を敷いて過ごすのかと思うとシンドイ。親父の時は37歳。今のオレは47歳。骨身に応える。さらには女性部屋。神経に悪い。我が家の家計で個室は絶望。
オレは今、とにかくホッ!! としている。
「シーコッコッコッコッ」
和ちゃんのオシッコがなかなか出ないのでやってみた。
年齢もあるのだろうけどチビチビ。そして二人で大笑いした。

★2月28日
2月13日からの禁酒は昨日で半月になった。昨年の10月だったかな? 一ヶ月間、アルコールを断ったのは。オレは淋しくなるとアルコールが欲しくなるけど、依存症ということではないらしい? もっとも、ここ最近はアルコールを飲んでいられる状況でもなかったけれど。
昨日は、和ちゃんを叱る? “叱る”というのは間違ってるな。“叱る”には、愛が含まれているものネッ。そうそう。昨日は、記憶にある限りでは和ちゃんを怒らなかった。長閑な一日だった。自己嫌悪に襲われなくてもすんだし。
ただ、和ちゃんの腰痛はまだまだ続いている。和ちゃんの今朝の説明では、痛みのある箇所が腰ではなく尻のようなことを言っていた。もう2、3日は様子をみようと思うけれど、尻なら、改めてレントゲンを撮ってもらわないといけないかも?
しかしホント。自分の病状が正確かつ明確に語れないアルツハイマーというのは恐ろしい。

★3月1日
いよいよ3月か。一日は長いけれど、過ぎ去ってみるとあまりにも高速。このまま、朽ち果てていくのだろうかオレは? そんな御無体なホント!!
しかし、家の中の埃がスゴイ。ホームヘルパーさん利用も脳裏をチラチラする今日この頃。でもなあ、オレの部屋にはエロ本が錯乱しているし、まずそれを片づけることを考えるとホームヘルパーさん利用もファイトが湧いてこないし。
確かに、守秘義務がホームヘルパーにはある。でもなあ、
「野田さんの部屋。いやらしい本ばあで、こっちまで恥ずかしゅうなったがホンマ!」
絶対、誰かに言いたくなる。
マイッタ!! どうしようかなあ?
和ちゃんの腰痛? 尻痛? は段々の良くなっている。とはいえ、今日もデイサービスはお休み。今日で一週間、買い物に出ている時間以外は和ちゃんと面と向かい合ってきたわけだ。ポータブルトイレにもかなり慣れ、混乱も和らいだ。
そろそろ解放して欲して下さい。和ちゃん。

★3月2日
昨日午後から、ポータブルトイレから日常の和式トイレでオシッコをするようになった。痛いのは痛いらしいのだけれど、以前と比較すればかなりウンチングスタイルがいい。
ただ、ウンコがここ一週間出ていない。リンゴ・イヨカン等々、気は使って食べさせているのだけれど運動が足りないのか?
とにかく、一歩復活!!
そして風呂に入れた。和ちゃんにとっては10日ぶりになる。髪を洗い、身体を洗った。想像していたよりはスムーズに進んだけれど、オレは一汗も二汗も流すことになった。
シンドイ!!

★3月2日
今日はパソコンに向かっていると頭が痛くなる。和ちゃんの調子は上々なのだけれど、オレは疲れているなあ!
今日の出来事は明日書こう。書けるかな?

★3月4日
午前8時40分。今、オレはカフェラテを飲みながら一人を満喫している。和ちゃんには悪いけど。
その和ちゃん、今朝、元気にデイサービスに出発した。現在時のオレの心境からいえば、“出発していただいた”と訂正した方がいいかもしれない。腰痛はまだあるものの一人で和式トイレに行けるようになり、足首の腫れもかなり良くなり足らしい原型が戻ってきた。ヤレヤレ。
ウンコが8日間出てないのが気になるけれど、本人には腹部の膨張感など不快感はないとのこと。便秘薬などはなるべく使用したくないので後少しだけ様子をみたい。
さて昨日、オレはかなり厳しく疲れていた。和ちゃんのせいではなく、一昨夜、眠りにつけなかったのが一番の起因。ただ、和ちゃんが階段から転落以降の9日間、四六時中一緒にいたのが最大因子かもしれない?
で、昨日は高松稲荷の直ぐ側までお出かけしてきた。というのも、オレの友人(女性)である北の迫さんが、そこにデイサービスセンターを立ち上げたから。どちらかというと、今日行っている牛窓のデイサービス同様に宅老所的な長閑な雰囲気。3月1日に開所したばかりで、まだ利用者はいない。
『和みのとき』
“なごみのとき”と読むのだけれど、これが北の迫さんが立ち上げたデイサービスの名称。
和ちゃんにはお馴染みの蜂谷師匠にも来てもらい、プロの写真を撮ってもらう。これは近々HPにアップしたい。
昼食をご馳走になり、茶など飲んでから家まで送ってもらった。
で、和ちゃんは明日、この『和みのとき』の最初の利用者として出陣するこになった。担当のケアマネジャー・長谷川さんにも連絡をとりケアプランに組み込んでもらった。
突然のことだけれど、『和みのとき』では入浴できる。今のオレは、今の和ちゃんを入浴させるのはシンドイ。で、決めた。もっとも、オレが入浴サービスを利用したいくらいなのだけれど? オトコの手なら利用しない。
しかし、介護関係者に友人・知人が多いのだけが救いだ。
和ちゃんは4時半に帰宅する。
「お帰りー」
元気に優しく迎えてやろう。

★3月5日
今朝、和ちゃんはNHK連続テレビ小説“まんてん”を見ているときに炬燵から出ていった。“まんてん”を見ているときに和ちゃんが離れるのは珍しい。トイレだ。予想はついた。
和ちゃんが戻ってきた。
「和ちゃん。出たんか?」
「すごかったなあ!! あんななあ、ちょっとねえよ」
和ちゃんは今朝、ウンコを大量放出した。なんと9日間も出てなかったのだから。
ヤレヤレ。
そして今日、デイサービス・『和みのとき』の名誉ある第一号利用者となった。風呂にも入れてもらいキレイになった。明後日も行ってもらう。管理者の北の迫さんが言うには、右足首の腫れもかなりなくなり、足らしくなっているとのこと。
こんな調子だと、オレもイライラすることもないのだけれどネッ!!

★3月6日
和ちゃんとオレにとっては穏やかな日々が続いている。オレが声を荒げることもここ数日ない。自己嫌悪しないで済むといことはありがたい。
和ちゃんから、ホンワカと香りが飛んでくる。いい香り。デイサービス・『和みのとき』で洗髪してもらったシャンプーの香りだ。
オレと和ちゃんに、新しい一ページが加わった。
明日、『和みのとき』で入浴させてもらう。オレはといえば、3日間またまた風呂に入ってない。今日も寒いし入りたくないなあ!

★3月7日
午前10時。和ちゃんをデイサービス・『和みのとき』に送り出し、久々に風呂掃除をし、今パソコンに向かっている。今日も和ちゃんは入浴してくるから、これで溜まっていた身体の垢もスッキリするに違いない。オレは今日入らないと5日間はいらないことになるけど、風呂掃除をしたからといって入浴そのものがかったるくてしかたない。精神的にはカムバックしてきた。ただ、蓄積疲労から抜け切れないでいる。今回は、出版予定の原稿の推敲も平行してやっていたから。
ところで、視力がかなり落ちてきた。近い所も遠い所も。生活に支障はないけれど、年齢を痛感してしまう。で、埃が目に入り込んでくること度々で、本気で掃除をする必要に迫られた。でも、もう少し暖かくなってにしようっと!!
さて昨日朝、和ちゃんはウンコを連日で出した。昨日は、オレは後方からジックリと観察した。和ちゃんがわざわざ、
「ウンコ出そうなわあ?」
と自己申告してきたので観察させていただいた。ちょっと粘っこい、少し小さめのが6個。オレは大笑いしながら数を数え上げた。そして和ちゃんと大笑い。
「どんな? 臭う?」
「ええ香りじゃあ!!」
凛としていた頃の“お袋”からは想像できない。でも、今の“お袋”の方が大好きだ。
そろそろ和ちゃんのパンツを買う必要がでてきた。昨日プラッツでオレは婦人物下着売り場にいた。そして、婦人物下着売り場でパンティーからパンツまでの数品を手にとって見た。買いはしなかったものの、考えてみれば少し変態? に見えていたかも。これが、婦人が男性物を手にとっているのなら日常の光景なのだけれど。
ふと、バリアフリーを考えさせられる瞬時だったけれど、後は手にしたパンツを購入カウンターまで持参するだけだ。

★3月8日
和ちゃん。今朝もウンコを放出。まだまだ腰痛が完治していないのであまり動くことはできないけれど、やはりデイサービスに出られるようになって身体も多少は動かす。それがいいのだろう。今朝も牛窓に向かって元気に出発。明日あたりからは少し散歩でもさせようと思う。そして、オレも今日は風呂に入ろう。
ところで、今週号の週間朝日に『痴呆症“座らせきり老人”が急増』という記事が掲載されてある。サブタイトルは、『介護施設に入ると、言葉巧みに車椅子に誘われて…』となっている。
で、オレもかなりの数の施設は取材した。取材の中には単なる見学も多かったけれど、以下の掲載記事からの一部引用文は介護施設の日常・常識でもあるとオレは確信している。

どの老人施設でも、7割以上を痴呆老人で占める。痴呆老人は、「家に帰ります」などと言って、目を離したスキにパッといなくなったり、廊下を徘徊し始めることがよくある。老人の徘徊は欲求不満のサインでもあるのだが、老人施設ではサインを読み解くことより、転んで骨折されることのほうが恐い。施設の責任問題になりかねないからだ。
ところが車椅子に座らせてしまえば、転倒の心配がなくなる。それでなくても、「食事はいや」「ベッドで寝ていたい」「風呂は嫌い」などという老人を食堂に連れていくのは骨が折れる。職員が走り回っている介護現場では、グズる老人の相手などしていられない。そこに車椅子を使えば、老人は将棋の駒のように思うがままだ。


こんな状況下でショートステイなど入れたら、痴呆老人は混乱の極みだ。もちろん、全ての施設がそうだとは言わないけれど、その多くがそうであるとオレは確信しているし、施設職員の多くが認めていることだ。

★3月9日
昨日、この日記を書いているときに在宅介護サービス・サルピス所長の松平さんから電話あり。
「今日の午後に、“ゆう倶楽部長浜”へ見学に行くんだけれど...」
というわけで、オレも同伴することになった。
実は、在宅介護サービス・サルピスもデイサービス事業に進出することになり、オレが薦める“ゆう倶楽部長浜”でお勉強ということになった。
“ゆう倶楽部長浜”へ到着。オレはこっそり入る。和ちゃんが他の利用者と楽しそうにやっている。なんだか嬉しくなってくる。和ちゃんが松平さんを発見。ビックリした様子だが、和ちゃんは松平さんをシッカリ記憶しており挨拶に出向く。
「お変わりありませんか?」
オレは益々嬉しくなり、和ちゃんの前に登場。和ちゃんはまたまたビックリ。そして笑顔を浮かべ、
「どうしたん?」
「今日は参観日じゃから、和ちゃんを参観しに来たんじゃがな!」
和ちゃんとオレにとって、穏やかな日々が続いている。

★3月10日
昨日から、野田明宏的リハビリを始めた。といっても和ちゃんと一緒に散歩するだけ。昨日は家近辺を500メートル程度歩いた。足取りはしっかりしている。このぶんだと、一緒に買い物に出られる日も近いようだ。
で、帰宅して和ちゃんが泣いた。
「こんなにしてくれるなあ、あんただけじゃ」
オカッパ頭の和ちゃんが愛おしくてたまらない。
オレも昨日、一週間ぶりに風呂に入った。一昨日はやっぱり入らなかったから。で、風呂上がりに身体を拭こうとしたら、擦れて垢のデルコトでること。結局、二度洗い。でも、まだまだ垢は溜まっている。明日か明後日には入らなくては?
そうそう。ある会社に依頼されて寄稿した。それが以下の文。

人間力を試されている

昨年7月29日、私の母である野田和子は中期から後期へ移行段階のアルツハイマー病と診断されました。重度です。心情的には“宣告された”との受け止め方が私の心を支配したのが実情です。
受診する以前より母の行動・言動から“おそらく?”とは覚悟していたものの、実母がアルツハイマー病であると聞かされたときは少なからずショックでした。
今、一人っ子である私は母と二人暮らしです。父は私と母に見守られ逝きましたが、母も、私の側で逝かせてやりたいというのが私のささやかな願いです。
もっとも、母はアルツハイマー病を除くと、76歳としてはいたって元気です。
「今日はなあ、ええウンコが出たんよ」
などと、親指と人差し指を丸めて太さを強調したりで、この介護・見守りが果てのないものにさえ感じ、疲労感がドッと押し寄せてきたりもするのです。
ところで、私は母を“和ちゃん”と呼びます。なぜ? 母はもう、私を息子と認知できず、一人のサポーターとして私と接しているからです。
しかし、そんな母が愛おしくて仕方ありません。148センチ、38キロ。小さな身体です。過去、母には親不孝の連続でした。
アルツハイマーと宣告された後、母はサポーターである私に、息子の話をしました。野田明宏。私のことですね。
「私の息子はなあ、大学出ても『カネくれえ』ゆうて電話ばあしてきてなあ。せえでも私の腹を痛めた息子じゃが。なんぼ出しても惜しいとは思わんかったんよ」
私は、母のこの言葉で腹をくくりました。
「これからのワシの人生最優先課題は和ちゃんの幸せじゃ」
あれから約半年が経過しました。なかなか決意通りにはいきません。怒り・悲しみ・切なさ・自己嫌悪の高速回転です。もちろん、母の笑顔という喜びもあります。
で、結論ですが、介護というのは人間だけが行うものです。私の知る限り。
介護=人間力
私は今、人間力を試されているのです。


★3月11日
書く暇がない!?

★3月12日
午前7時ジャスト。日の出が早くなり、太陽が東の空で穏やかに輝いている。
和ちゃんのことで特記することはないけれど、今見た太陽のような穏やかな一日を送りたい。
で、オレは最近少し疑問に感じている。オレのことを日記に記すのはいい。でも、プライバシーということを考慮すると、和ちゃんのプライバシーを侵害しているのではないか? 介護者の傲慢ではないか? などと。

★3月13日
昨日で禁酒を開始して一ヶ月が経った。オレの場合、アルコールは無くてもいいのかもしれない。ただ、もうじきビールが上手くなる季節になるので解禁しようと思う。もっとも、日に発泡酒一缶〜二缶限定といったところで。
で、昨日は和ちゃんと散歩した。距離を延ばし1キロ程を歩いた。来週からは一緒に買い物に出られそうだ。ただ、
「和ちゃん。足は痛うねえか?」
「せえが痛いんじゃ」
そう言いながら右足の靴下を脱ぎ見せようとする。捻挫で腫れ上がっていた足首が左足なのに。
今朝、和ちゃんはデイサービスに出陣。出掛けたあと物干しに目をやると、“がまぐち財布”が吊されてあった。
和ちゃんは和ちゃんなりに、いろいろ悩み考えているのだろう。穏やかで楽しければそれでいい。算数ができなくても、漢字が読めなくなっても。
笑顔があれば!!

★3月14日
今日の日中、オレは和ちゃんとデイサービス・『和みのとき』で過ごした。直ぐ隣にある神社の階段を数十段も上ってみた。問題なし。
素敵な一日だった。

★3月15日
昨日は素敵な一日だった。ただ疲れてしまい、8時には二人とも就寝。和ちゃんは直ぐに爆睡状態。オレも後を追って半熟睡眠へ。
で、昨日一日を振り返ってみると、和ちゃんの笑顔満開が一番印象的だった。もっとも、デイサービス・『和みのとき』の皆さんが楽しくさせてくれる雰囲気を作りだしてくれているのだけれど。
ところで昨日は、デイサービス・『和みのとき』にほぼ隣接する神社に登った。60段? 100段? まあ、暖かかったので軽い汗が出る程度はある階段を登り切ったのだけれど、今朝、和ちゃんに問うと足腰のどこにも痛みはないとのこと。オレは太股に少々きているというのに。和式トイレにも余裕で屈めるようになり完全復活。今朝も元気イッパイでデイサービス・ゆう倶楽部長浜に出陣していった。
さて、オレはお袋のことを“和ちゃん”と呼んでいる。和ちゃんがオレのことを息子と認知できていない日から、呼称を“お袋”から“和ちゃん”に替えた。
ところで、施設などでは介護職員方々の多くが名字に“さん”を付けて呼ぶ。和ちゃんなら野田さん。これはこれでいいと思う。30人〜50人を見守ってて、“和ちゃん”“和子さん”“野田さん”では混乱もするし、利用者家族からすると差別されているように思われても仕方がない。
でも、だからこそオレは小規模デイサービスを選択しているわけで、“和ちゃん”と呼んでもらえればありがたいと思う。
尊厳等々、お偉い方々は色々言ってるけど、親近感も大切なはずだ。
和ちゃん。
お世話になる皆さんからこう呼んでもらえれば、オレ以上に和ちゃんも嬉しいと確信している。要は心だ。
デイサービス・『和みのとき』でありがたいのは、入浴で身体を洗ってくれるのはもちろん、心もキレイに洗ってくれる。これは、とても大事なことだと思う。
そして、知能的には段々降下してはいってるものの、情緒的にはアルツハイマー宣告の日から比較して良くなっているように思えるのも、この7ヶ月間お世話になっているデイサービス・ゆう倶楽部長浜皆さんのお陰だと感謝している。
和ちゃんのお陰で、素敵な人たちと多く出会える。

★3月16日
そうだなあ? 今日は特記することもないなあ!
本当は今朝、和ちゃんと一緒して久しぶりに買い物に出掛ける予定だったのだけれど、小雨もぱらついていたしオレ一人で行った。転倒しやすく恐い。
でも、特記することがない日ばかりだったらいいのになあ。
今日一日、バカッ話をして過ごそう。
とはいえ、オレの一生のこれからの大部分、こんなリズムなのでしょうか? そういえば先日、岡山繁華街で偶然、アルツハイマーの実母を介護していた婦人に出会った。彼女いわく、
「オンナは生きるよー。野田さん。20年は覚悟せんといけんよ!」
そうなったらそうなったで、オレはアルツハイマー介護の匠になれるかな?