9月21日〜10月17日
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★9月21日
昨日、やはり入浴させた。お湯は少し今までより温めた。
「ああー!! ええ気持ちじゃなあ!!」
満願の笑顔にオレまで嬉しくなる。
そして和ちゃん。その延長か? デイサービス・和みのときでやっているとかのゴロンゴロン体操を披露。
和ちゃん。なかなかやるぞ。

★9月22日
岡山に出、少しウロウロ。やるべき事を済ませて、さて、どうするか?
とはいえ、和ちゃんは4時にデイサービスから帰宅する。時間は中途半端。1時過ぎ。赤穂線の時刻表とにらめっこ。赤穂線は1時間に2本。和ちゃんが4時に帰宅するといっても、その前に買い物も済ませなければならず、ギリギリセーフでそのまま和ちゃんの世話に突入はキツイ。
オレの心に時々、悪魔が過ぎる。悪魔の存在は有り余るほど認知しているけど、悪魔が囁いてくる。
「逃げれば?」
オレも逃げたい、と瞬時思う。そして逃げたら、オレはオレ自身が許せなくて発狂でもするのだろうか?
結局、2時前の赤穂線で帰宅。オレは切なく虚しくなった。なんだか世間はとっても楽しそうなのに?
帰宅したら岡山東商野球部OB会からの封書が届いていた。オレは年会費を一切納めてないけれど? 東商野球部創部100周年記念祝賀会参加出欠の伺いだった。
オレは本も書いた。行きたい。でも、11月23日。これは日曜日で勤労感謝の日。出席できない。和ちゃんの側にいる人間がいないからだ。
家族が少ないことに文句を言える筋合いではない。オレは結婚さえしてないのだから。でもなあ、なんか納得できない。多ければいい、というものでもないことは理解してるけど。
この切ない気持ちは秋らしくなったせいだろうか? アッチーが去り、少し身体に余裕ができたせいか? いやいや、オレの身体はまだまだ疲れている。いつまでも疲れているに違いない。だって、この寒暖差の気候に対して、和ちゃんの体調管理にも気を使う。
仕方ない。笑顔で“お帰りなさい”と迎えよう。
なんか、哲学してしまったなあ!!

★9月23日
明け方の冷え込みが寒いくらいだ。オレの体感温度と和ちゃんの体感温度に誤差があるようで、余計に気を使う。今朝も元気にデイサービスに出陣して行ったけど、厚めのカーデガンを羽織らせた。暑ければ脱げばいいのだから。そして、カーデガンのボタンをはめてやろうとすると、
「できるからやるよ」
心強いお言葉。
今週はデイサービスの日取りが異なる。オレが26日に仙台に行かなければならず、26日はお泊まりということで調整している。今回はデイサービス・和みのときで一晩過ごすことになるのだけれど、ゆう倶楽部長浜のとき同様に介護保険外だから一泊5000円で引き受けてもらった。和みのとき側もお泊まりは初体験だからご苦労をかける。
そういえば先日、オレがパソコンに向かっていると、側でゴソゴソ。
「なんしょんなら?」
「これを使おうと思うて」
ギャ!! パソコンのコンセントを抜こうとしている。
「アホウ!!」
そして冷静になり、
「和ちゃん。あのなあ、これは触ったらいけんので。電気が来て、ビリビリになって死んでしまうから」
「ホンマやあ!! 気おつけます」
どうなることやら。日記がアップできなくなったら和ちゃんのせいかも?

★9月24日
セブンイレブンに速攻で行って帰ってきた。午前9時半。この頃、セブンイレブンに配車が着くし、小雨がぱらついているので和ちゃんとは一緒に出られないから。和ちゃんは転ぶ。岡山弁で“けっぱんずく”と言うけれど、足取りはシッカリしているのに何故か思いもしないところで転ぶ。だから、雨の日は家で留守番? してもらう。もっとも、あまり長時間は一人にできないから速歩で往復する。今、気温が20度ないのに身体は暑いから扇風機を回してパソコンに向かっている。
「お帰りなさーーい」
オレが帰宅すると素直な表情むきだしで喜ぶ。そして今、年中行事になってしまった5円玉整理に没頭している。
今日は何をして一緒に過ごそうか? 和ちゃんの作り話の相手はシンドイからなあ!!

★9月25日
昨日、和ちゃんとキャッチボールをした。一日一緒に過ごすとなると、それなりに遊んでかまってやらないといけない。でもなあ、爆発的に嬉しそうな顔をされると“続けなければ”と、つくづく思う。
もっとも、オレも和ちゃんの笑顔が大好きなんだけどネッ!!

★9月26日
かずちゃん へ
かずちゃん、げんきにしてますか。
いま、しごとでせんだいというところにいます。
ほんとうはきょう、かえりたいのですが
ひこうきがありません。
ですから、がっこうのおねえさんと、
こんやはいっしょにねむってください。
おかねのしんぱいはありません。
あしたはゆうがたまでにはかえりますから、
またいっしょにねむりましょう。
おねえさんのいうことをよくきいて、
たのしいよるをすごしてください。
では、またあした。
かずちゃんがだいすきです。
あきひろ


★9月27日
いやあーーー、疲れた。
けれど、充足感・満足感に包まれている。
昨日、仙台で講演をしてきた。約40人ほどが聞いてくれたのだけれど、やっぱ、とんでもない事を喋ってきたなあ! というのが講演後の今の実感。
とはいえ、介護というのはとんでもない事の繰り返しが現実なのだから、そういう視点で考えれば、当然のことを話してきたとも言える。
講演のことはさておいて、ではないな。和ちゃんを一晩預けた。そして和ちゃんが泣いた。オレが講演前に仙台からデイサービス・和みのときに電話を入れたら和ちゃんは泣いていた。そして、
「早く会いたい」
とも。少々、胸が詰まった。もっとも、デイサービス・和みのときの北の迫さんと料治さんは和ちゃんをシッカリ把握してくれてるし、最強コンビだから心配する必要なし。オレは安心しきって講演させてもらった。まあ、上出来の方だったと思う。
で、俺は講演後、一人飲みに出た。仙台は牛タンが名物。牛タン居酒屋のような所に入り、生ビールを飲み、牛タン定食を食べ、そこのオヤジと人生を哲学した。
和ちゃんがアルツハイマーを宣告されて以降、1年2ヶ月ぶりに夜の町へ出、飲んだ。人生。
さてと和ちゃん。昨夜の泣きべそはどこへやら。今、元気に5円玉を数えている。今夜は爆睡するに違いない。オレも爆睡モードに突入したいけど?
オオ!! これだけは記しておかないといけない。
オレの講演を担当していてくれたYさんはスッゲエ美人だった。オレが20歳若ければ、素敵な出会いだったんだろうけど? ちょっと損した気分なんですボク。

★9月28日
今朝、プラッツに買い物に出かけた。プラッツの往復2キロは久々だ。和ちゃんは途中、一回転びそうになったけれど、オットットットってな感じでセーフ。よく踏ん張った。
で、プラッツで買い物をしたあとはプラッツ内の喫茶店でコーヒーを飲んで帰るのだけれど、
「ここでコーヒー飲むん、久しぶりじゃなあホンマ!」
とのお言葉。確かに一ヶ月以上は立ち寄ってないはず。これは記憶の範疇から出た言葉なのだろうか? とすれば、和ちゃんはエライ!!
喫茶店で会話している時、オレは質問した。昨夜、和ちゃんが眠っているとき、オレは暑くないか? わざわざ眠りから覚まして聞いた。
「ヒイちゃんが暑い言ようるなあ」
寝ぼけながら応えた。ヒイちゃんとは和ちゃんの妹で、久子といって10年以上前に亡くなっている。
「和ちゃん。ヒイちゃんゆうて誰なら?」
「私の弟じゃが」
「アホウ!! 妹じゃがな」
「そうそう。いもうと」
名詞が混乱している事実は否めないけど、オレからいえば伯母のことを覚えているという現実が嬉しかった。
和ちゃん。少し調子がいいぞ!!
そういえば今朝、たぶん4日ぶりのウンコ放出で、自己申告によると特大が3発落ちたそうだ。

★9月29日
今朝の朝食時、お湯を沸かして緑茶の温かいのを作り和ちゃんにも飲まそうと思った。机の上を片づけさせ、和ちゃんの大事な5円玉も片づけるように言った。すると和ちゃん。何を思ったか? 5円玉数枚を緑茶の入ったコップの中に投げ込んだ。
「コリャー!! アホか? オメーだきゃあ何考えとんなら? ワシがせっかくお茶いれてきとんのに。感謝の気持ちゆんがねえから、そんなことができるんじゃ。クソババー」
と、朝からオレのテンションが上がった。まあ、日常に戻ったとでも言うのか? とはいえ和ちゃん。シッカリ反省の表情は見せるのだけれど、なんで怒られているか理解できない様子。こういうのがオレのストレスになる。
で、午前中は林病院へ月に一度の定期検診。林先生からは、“表情も良くなかなかいいですよ”との診察。オレの名前も言えたし。もっとも、オレが息子であるとは思っていない。そして、10月27日にインフルエンザの予防接種の予約をして帰宅した。

★9月30日
昨夜から薄い掛け布団をかけて眠ることにした。
さてと、どうもオレはイライラする。そろそろ残暑疲れから解放されつつあり、段々に余裕がでてきている。となると、動きたくなる。しかし、和ちゃんを抱えている限り行動範囲は狭い。
犠牲感!?
先日のお泊まりから想像しても、やはり今の段階ではショートステイには無理があるだろう。オムツなんかにさせられたら、誰のためのショートステイなのか存在の意味がなくなる。
あーあ。オレは早朝から怒鳴り声を上げている。

★10月1日
速い。あまりにも高速で日々が過ぎていき、今日から10月。一日一日はとーーても長い気がするのに。
しかし、岡山の今朝は冷えた。この前まで残暑で苦しんでいたのがウソのようだ。オレの周りにも風邪引きさんが増えてきた。こう早朝と日中の寒暖差が激しいと身体もついていけないのだろう。和ちゃんの健康管理にも要注意。
ただ、考えてみると、和ちゃんは夏バテもせずシッカリ踏ん張ってくれた。正直、助かった。
今日はプラッツまでの買い物を、少し遠回りしていこう。そして、少し怒るのを我慢してみよう。
そうそう。和ちゃん、今朝もウンコを2発落下。消化機能は食欲の秋に向けて万全のようだ。

★10月2日
空があまりにも“秋あき”していたので、和ちゃんを立たせ写真に収めた。空気も爽やか。和ちゃんからはアルツハイマー病らしくない声。
「空が高いなあ!!」
ところで昨日、予定通りにプラッツに買い物に出た。西大寺観音院経由で少し多めに歩いてプラッツに到着。午前10時3分。プラッツは10時オープン。だけど、開いていない。ドア前にいるお客さんらしきオバチャンに聞くと、昨日は月末で昨夜は棚卸し。そして午後12時からオープンとのこと。
「和ちゃん。今日はまだなんじゃて。マイッタなあ!!」
「しょうがないが」
オレはなんだか腹立たしかったのだけれど、和ちゃんは怒らない。アルツハイマーになって以降、和ちゃんが怒る姿をあまりみたことがない。凛としていた頃、特に若い頃はヒステリー気味なことが多かったのに。
今の和ちゃんは、ある意味では仏の心に近づいているのかな?
良性アルツハイマーなのだろうか?

★10月3日
現在、2日の午後6時23分。和ちゃんが就寝モードに突入してしまったので、変則日記で書いている。しかし、今日の和ちゃんはお疲れの様子。夕飯はシッカリ食べ、歯磨きもしたから問題ないけど、オシッコもさせたし。
でも、少し気になったので体温を計ってみると36.2度。OK!! 午後9時頃になったら布団を掛けてやろう。2メートルの距離を置いて、和ちゃんは鼾をかきはじめた。眠る。これが和ちゃんの健康一番なのだから。オヤスミ。
さてと、和ちゃんがデイサービス・ゆう倶楽部から帰宅した時、送迎してくれた谷口さんから、
「スミマセン。月曜は、入院されてた方が二人退院されて利用されるのでイッパイだそうです。朝の時点では知らなかったもので『ハイ分かりました』とお引き受けしましたが申し訳ありません」
とのことで、デイサービス・和みのときに早々電話し月曜を確保。そこで改めてデイサービス・ゆう倶楽部長浜に電話し火曜のOKをもらい一段落。デイサービスの予定日を少々変更した。
月曜・金曜がデイサービス・和みのとき。火曜・木曜がデイサービス・ゆう倶楽部長浜ということになった。
とはいえ、確かに持病を抱えている利用者がほとんどだから、デイサービス側も予定設定が大変だと思う。和ちゃんだって階段から落ちたときは10日間ほど通えなかったもんな。
デイサービス・ゆう倶楽部長浜。デイサービス・和みのとき。和ちゃんはどちらのデイサービスでもお泊まり一号で、大変お世話になっている。もっとも、他の利用者のお泊まりはいないのだけれど。
今、和ちゃんの情緒が安定しているのも二つのデイサービスのお陰だ。
和ちゃんのお世話をしてくれてる皆さん、本当にありがとうございます。

★10月4日
なにやら、布団の温もりから抜け出すのがオックウになりつつある。少し早すぎるか? で、オレは和ちゃんに布団にくるまって相談した。
「和ちゃん。今日は一日中、布団の中で寝とかんか? 一日中、なんにもせんのじゃ。メシもなし」
「せえでも、そりゃあ退屈じゃろ。あんたがそうしたいんならそれでもええけど...オシッコは行ってもええん?」
「それはええで」
和ちゃんは布団から飛び出し、ウンコを一つ落としてきた。笑わせてくれる。
さて、昨日の夜は真摯に読書に立ち向かった。
痴呆を生きるということ(小澤勲)
書評を記すのもシンドイので、なぜオレがこの本を購入し、今、このHPに目を通している方々に推薦するかを書き置きたい。
実は、東京の出版社勤務の方から情報をいただき、この本の存在を知った。オレは基本的に本は図書館で借りて読むのだけれど、とりあえず丸善に足を向けた。発見。値段は740円。お手頃だ。ページを開き“はじめに”を読む。ここで購入を決めた。というより、一つの言葉にこころ動かされた。
透明な笑顔
和ちゃんも、透明と表現していいのか? アルツハイマー発症以降、打算のない笑顔というか? 丸ごと笑顔というか? 笑顔がスコブル素敵になった。
結局、読破。この小澤先生が岡山で講演するという。和ちゃん同伴で聞きに行こうかなあ? と考え始めている。あくまで考慮中だけど。でも、オレが位置づけるのも恐縮だけど、この本は本物です。

★10月5日
昨日、和ちゃんがまたまたケッパンヅイタ(転んだ)。我が家の階段の最上段に足を掛けようとして、足先がヒカカッタ。下りではなく上りだったのでスネを打っただけだけど、オレの視線の中でケッパンヅイタ。要注意しているのに、油断してしまう。まあ、本人は直ぐに、ビニール袋たたみに勤しんだのだけれど。
で、昨日は入浴させた。涼しくなってきたのでオレも楽だ。冬になれば、もうデイサービスだけの入浴で充分。体重を測った。42キロ。ベスト体重だろう。
そして昨日午後、仙台での講演のアンケート用紙コピーが送られてきた。アンケート用紙を見る限り合格点のようで安心した。
介護ど真ん中のオレだけど、そこそこ楽しい人生だ!!

★10月6日
昨日はプラッツへの買い物に出たとき、少し遠回りをした。途中でコーヒーを飲んだり、1時間半かけて往復した。脚はシッカリしたものだ。
で、アルツハイマー病的な視点で考察してみると、少しづつ進行しているのが和ちゃんの行動から分かる。最近、夜トイレに行って電気を消して来ないことがある。
「和ちゃん。電気消してこんとおえんがな?」
「まだ、中に人がおられるんよ」
オレと和ちゃんしかいない我が家。
「どこえおるんなら?」
和ちゃんの手をとってトイレに入る。和ちゃんが狭いトイレの上下左右に目をやりながら、
「おかしいなあ?」
今朝も5円玉がヘアピンの代わり。5円玉で一生懸命に髪を固めようとしている。なんだかとっても可哀相になる。その反面、これからの和ちゃんを想像すると不安にもなり怒りも湧きだしてくる。
「アホウ!! シッカリせえ。5円玉もヘアピンも分からんのか?」
怒鳴りながら、そういう自分がたまらなく嫌にもなる。
さてと、これから和ちゃんのオッパイを揉みながらジャレルことにしよう。結構、和ちゃんはこれが好きみたいだから。というより、肌と肌のスキンシップが楽しいのだ。オレも楽しい。
まあ、母子なんだからこんなケア方法があってよいはずだ。もっとも、オレ好みの女性とならルンルンなんだけど。
オット! 不適切な活字を踊らせスミマセン。

★10月7日
現在時、午前8時40分。和ちゃんをデイサービス・ゆう倶楽部長浜に送り出して、カフェラテを飲みながらPCに向かっている。少し前まで、ペットボトル2リットル入り緑茶をガンガン飲んでいたのに、温かいモノが恋しい季節になってしまった。オレの心も温かい心と身体を欲しているなあ。この文面を“エッチなヤツ”と捉える人もいるかもしれないけど、男のエッチ度合数の低下が少子化にも絡んでいるとオレは確信しているのだけれど、この考察は変?
さてと、昨日はお姉さま方々お二人と介護についての話しで盛り上がった。もっとも、最近のオレは和ちゃんから離れている時は極力、介護とは距離を置きたくて仕方がないのだけれど、ヤッパ介護の話題となると力が入ってしまう。
そして昨晩、そのお二人よりメールを頂き、今朝、二本のメールを返信した。しかし思うに、今やPCは誰もが使用する日常不可欠なモノになっている。私にメールをくれる方々には多くの女性がいるが、私よりかなり年輩の女性も少なくない。
時代はスコブル高速で進んでいるようだけど、在宅介護の現実はといえば、限りなく停滞気味に思えて仕方ない。では、オムツ交換ロボットなるものが安価で出回ったと仮定したとき、時代はそれを良しとして受け入れるのでしょうか? 今日は介護評論家の野田明宏でした。

★10月8日
特記することはないなあ。
アッ!! そういえば今日午後、ケアマネジャーの長谷川さんと新たに病院送迎等をお願いすることになる事業所の担当者が来るんだった。
これは介護タクシー絡みからくる問題が根本にあって、書き始めるとルポルタージュになってしまうので簡単に記すけど、今までお願いしていた事業所が岡山県の判断では白タク扱いになりそうだからだ。とはいえ、岡山県の姿勢にもオレはかなり問題があると思っている。国土交通省と厚生労働省間にも見識の違いがあるし。
近々に一度、キッチリと岡山県庁内の長寿対策課を訪ねてみよう。

★10月9日
今日は厳しい一日だった。といっても今、8日の午後9時だけれど。
プラッツに和ちゃんと行き、花を買い、それを活け、昼食したまでは良かった。午後1時半頃だったと思う。また和ちゃんがウンコを漏らした。トイレから出てきて、パンツに付着したウンコを見せる。肛門を確認すると、まだ拭きが甘く肛門周囲には多量に付着している。どういうことか、トイレ周りにも少々落ちている。和ちゃんが、自分の手を肛門辺りに持って行こうとする。いつものことだ。
そのいつものことにオレは切れた。肛門に持って行った手で髪とか着ている服に触る。それだけはするな、といつも言い聞かせているのに。アルツハイマーだから無理なのは理解しているけど。
「クソアホウ!!」
オレは和ちゃんの頭を2度叩いた。和ちゃんの顔に怯えが伺える。オレは悲しくなった。オレ自身が壊れていっている。人間を止めたくなる。誤解してもらっては困るが、自殺願望ではない。オレがオレ自身に三行半したいのだ。
とはいえ、和ちゃんをどうする? 苦しい。
少し経過して余裕が戻った。泣いている和ちゃんを抱き寄せた。オレも目頭が熱くなった。オレはいったいどうなるのだろう?
黙考ばかりしてられない。2時には、ケアマネジャーの長谷川さんと次回から病院送迎をお願いする“あすなろ”の人たちが来る。オレは和ちゃんのジャージとパンツを手洗いし、洗濯機に入れた。
2時。長谷川さんたち3人が来訪。事情を説明し、和ちゃんは同席させないことにした。30分くらいが経過し、オレはやはり和ちゃんを同席させることにし、和ちゃんを2階から下ろして紹介した。
そして、それから30分が経過した頃だろうか? 和ちゃんが一人の女性に、自分が敷いている座布団を差し出した。
「スミマセン。使ってください。お客さんなのに」
オレは嬉しくなって和ちゃんの手を握った。和ちゃんは微笑んでいる。“透明な笑顔”だ。
皆が帰り、オレは和ちゃんに問うた。
「和ちゃん。ワシやこうと一緒でええんか? また叩かれるで」
「私のことを思うてじゃろ。あんたと一緒にいたいに決まっとるが!!」
オレはまたまた目頭が熱くなった。
和ちゃんは今、グッスリ眠っている。息子から言うのも変だけど、和ちゃんの人柄がとても好きだ。和ちゃんの隣に寝るようになって、はや一年と三ヶ月目に突入する。和ちゃんの寝顔も大好きだ。

★10月9日 VOL2
和ちゃん。今朝も元気イッパイでデイサービス・ゆう倶楽部長浜へと出発していった。オレが抱えている葛藤など全く無縁とばかり。もっとも、オレが昨日の事件で自己葛藤しているなどと感づいていたら、アルツハイマー病などではないはなあ!?
VOL2を記しているのには特別な意味があるわけではない。知人との待ち合わせアクセス不備で、今、午後1時に帰宅しているからだ。ゆう倶楽部長浜へ、和ちゃんの延長をお願いしようとも考えたけれど、無理なお願いを頻繁にするのも悪いので帰宅した。こういう時、和ちゃんに対して重たい“犠牲感”を募ってしまう。
だからといって、今朝の和ちゃんの元気のよさには慰められ、オレが自己不信から解放されつつあるのも事実。今朝、和ちゃんはスコブル笑った。そして嬉しそうだった。まあ、オレが極力スキンシップに努めたこともあるけど、和ちゃんの人柄なのだと思う。
なにはともあれ、オレはオレへの不信感から脱出しつつある。和ちゃんの笑顔という助っ人のパワーで。

★10月10日
今朝早朝5時頃、和ちゃんがトイレに行った。トイレから♪ブッ♪ ♪ブブッ♪と快音が響いてくる。トイレから出てきた。
「和ちゃん。ウンコ出た?」
「水(オシッコ)と音だけじゃなあ」
オレの脳裏に黄信号が点滅する。和ちゃんのズボンを膝まで下ろし確認する。確かに音だけだったようだ。和ちゃんが布団に潜り込む。
「和ちゃん。今日、学校(デイサービス)へ行ったら、明日・明後日は連休(月曜はデイサービス・ゆう倶楽部長浜に頼んだ)で。二日間ずーーと一緒じゃあ」
「ホント!? 嬉しいー」
色々あるけど、和ちゃんはオレと一緒にいることが本当に嬉しそうだ。期待に添わなければ。
オオッ!! そういえば、今日は亡くなったオヤジの誕生日。和ちゃんが凛としている頃は、仏壇は花イッパイで飾られていたのだけれど.....

★10月11日
オレは昨日から、新たな介護ルポルタージュ上梓(出版してあげるという出版社はまだない)のため行動を開始した。格好良く表現すれば、介護ライターとして戦闘モード突入というわけだ。頭の中では色々企画は浮かぶのだけれど、和ちゃん優先の人生だから体力が伴わなくなっている。ルポルタージュを書こうとすれば動かなければならない。オレは足(車)もなければカネもなく、人脈一本勝負。まあ、介護関係者の友人・知人は信頼厚き人たちだらけだから安心しきっているのが事実。皆さん、協力してネッ!!
で、オレは和ちゃんがデイサービスに行っている間に“北ふれあいセンター”で介護情報誌を5冊借り、紀伊国屋書店に向かった。久々に、オレの“背番号13青春録”の売れ行きを確認しに行ったのだ。もっとも、平積みされている本が、減ってるかどうか? 程度の確認だけれど。
ウヒャー!! オレがオレの自書(背番号13青春録)の前で沈思黙考(以前、何冊あったか振り返っていた)してると、素敵な婦人が自書に手を伸ばし、チラチラと目を通したと思ったらそのままレジで購入してしまった。キャー!!
オレは、オレの本を読んでくれている人たちが大勢? いることは承知している。売れなければ困る。オレはまだしも、出版社に悪い。ただ、オレは、オレの目の前で自書を購入していく“お客様”を初めて確認した。著作権があるのはわずか4冊だけれど、著者として身震いするほど感動した。だから、和ちゃんと関係ない事だけどここに記している。
関係ないことはないか? こういうことがストレス解消にもなるし、オレに嬉しいことがあれば必然として和ちゃんにもより優しくなれるのだから。
良き一日だった。仙台での講演料も振り込んでもらえたし。

★10月12日
昨日、朝食後に和ちゃんの血圧を計測したら121−71だった。最近はデイサービスでの値も良く、和ちゃんの体調はスコブルいいように思う。
さてと、昨日はまたまたプラッツまで遠回りして買い物に行った。西大寺観音院の階段もシッカリした足取りで上れる。帰路は、トイレットペーパー12個入りを持って帰ってもらった。さすがに少々疲れた様子はあったけれど復活も早かった。
で午後、入浴させた。
「百点取らんといけんからなあ!!」
とオレに問い掛け、衣服を脱ぎだした。家で入浴する時には点数をつける。オレの言う通りにできれば百点。もっとも、簡単なことを要求するだけで、“両手を上げる”“前を向く”“お湯に浸かる”“洗顔する”程度。そして、ある程度に身体が拭けていれば百点。
「ヨッシャ!! 今日は百点じゃ。和ちゃん、これじゃったら幼稚園は通えるでホンマ!!」
「ホンマ?? ありがとう」
世間はどう理解するか知らないけれど、オレたちはこれでいい。

★10月13日
土・日、連チャンで和ちゃんと一緒に過ごしたオレは少々お疲れ。本来なら今日も含めて3連チャンということだったのだけれど、デイサービス・ゆう倶楽部長浜は祭日もオープンしているので和ちゃんを行かせた。祭日ということなのか? 一人空きがあったから。
昨日、従姉妹からもらった花を活けさせた。花を活ける和ちゃんは生き生きしている。そして、熱中のあまり真剣な表情にもなる。まだまだ感情は豊かだ。
しかしなあ、和ちゃんの妄想に付き合うのも骨が折れる。どこかの子の浴衣をダメにしたとかで浴衣を購入したいと言い、どうせ今日の一瞬だけの妄想なのだけど、オレにもしカネがあるのなら不足分を補って欲しいと懇願する。和ちゃんの手持ちは5円玉十数個に10円玉2枚。
「これだけあるから足らんぶん貸して」
こういう妄想に真摯に付き合っていると、ストレスの臨界点到達へは“弾より速いエイトマン”。とはいえ、いい加減な対応では和ちゃんがふて腐れる。
そろそろ一度、テープレコーダーに盗って、日記にテープ起こしをしてみるかな....

★10月14日
今朝もカフェラテを飲みながらPCに文章を打ち込んでいる。カフェラテといっても、もちろんインスタントだけれど、和ちゃんをデイサービスに送り出しての一杯は美味い。和ちゃんがいると、どうしても隣でガチャガチャやっていることが多いので落ち着いて飲めないのだ。食事にしても、和ちゃんと一緒だと味わって食べるということは無理。と記したけれど、オレは味わって食べるほどの食通ではないのでOKだけれど、こういうことでイライラ爆発する介護者も多いだろう。そんなことを気にしてては介護者できないか?
ところで昨日、ふ? と思ったのだけれど、和ちゃんは以前、アルツハイマー病を宣言される以前はホームヘルパーさんに家に入ってもらうことに不快感を持っていた。今、和ちゃんの脳裏に刷り込まれている幻想では、いろんな人が我が家を出入りしていることになっている。ということは、ホームヘルパーさん立ち入りもOKということで聞いてみると、
「そりゃあ、ありがたいことじゃが!」
今、和ちゃんの万年床の上には5円玉が散乱している。このまま放置して、デイサービスから帰宅してこのありさまを見たら、
「アッ!! またやられた」
と誰かのせいにするに違いない。手がやけるなあ。

★10月15日
昨日、外出から帰宅して洗濯物の乾きをまず確認。乾きはまだ甘かった。オレは一人愚痴った。
「チェ!! 雨じゃから乾かんか? ハーア!?」
こんなことを愚痴っているオレ自身が、なんだか哀れになった。さらには侘びしさまで感じてしまう。
♪♪苦しくたって 悲しくたって コートの中では平気なの♪♪
っていう大きな瞳を持つベッピンさんもいたけれど、オレなんか平気じゃないなあ。
で、この日記は何度も記してきたけれど、出来るだけ素直に書こうと意識づけている。クラーーイ日記にならないよう心掛けはするが、まあ、オレも極普通(普通でない、という人たちもいるにはいる)の人間だから急降下したり急上昇したり停滞もある。
で、で、昨日は“介護職人”であり人生の少し先輩である女性に会ってきた。この人と話をすると、心落ち着かされる。オレは出会った日から尊敬している。最初は取材で会ったことが発端だけれど、かれこれ10年近いお付き合いになるはずだ。マスカット球場で一緒に阪神を応援したこともある。オレは張本がいた当時の東映フライヤーズしか熱烈応援したチームはないのだけれど、彼女が誘ってくれたのだ。そして彼女曰く、
「あんまり自分を責めん方がええよ」
でもなあ、和ちゃんは弱者。ウンチを漏らしたり、妄想からわけのわからないことを言いオレをイライラさせるけど、叩いてしまえば弱いモノイジメであることに違いない。オヤジの呪縛からもまだ解放されていないというのに。
つまり、この自責の念はオレの性分なのだろうか? オレは人生先輩の彼女に言った。彼女はある介護研究会の一員でもあり、周りには大学の偉い? 先生方もいる。ケアマネジャーはもちろん、介護職全般が入会している。オレも一員だったことがある。
「オレとお袋をサンプル教材にでもして、いろんな視点から『どうしたらこの二人にベスト介護を提供できるか?』を検証・考察してくれませんか?」
オレはいつでも裸になる覚悟はできている。逆転満塁ホームラン的回答が出れば、オレの全てをさらすことなどお安いモノだ。ただ、精神的にも経済的にも丸裸にされるのは誰でも嫌だ。オレだって取材するときは、表現が妥当でないかもしれないけど、一枚一枚ゆっくり剥いでいく。時には、一枚一枚包むことさえする。介護の取材は微妙なのだ。
なんか話の方向がお門違いになってしまったけれど、ボクはまだまだ踏ん張れます。

★10月16日
「私やこうと一緒ばあに、あんたにええ事がのおてゴメンナ」
昨日プラッツからの帰路、和ちゃんが歩きながらポツリと言った。
「アホばあ言うな。和ちゃんと一緒におったらええ事もぎょうさんあるがな。アルツハイマーじゃから直ぐにそういう事も忘れるのおホンマ! なんも心配せんでええんじゃ」
「そお言うてくれたら安心じゃわあ」
オレは時々、怒ったとき、和ちゃんと一緒にいること・見守り・介護していることが不幸のどん底のように和ちゃんにブツケテしまうことがある。和ちゃんの脳裏で普段は閉じているメモリーのドアが突然開き、悲しくなったのかもしれない。そして、他人に迷惑・お世話してもらいながら生きていることに悩んでいる。
ただ、それが幻想・妄想と重なってしまっているからオレは混乱する。とはいえ和ちゃんが偉いのは、本当に偉いのは感謝の気持ちを忘れないことだ。オレは素敵な母を持ったと思う。こういう気持ちをオレ自身、持続できれば問題ないのだけれど。
ところでところで、一昨日のことだった。オレが西大寺のセブンイレブンで一合96円の“鬼ごろし”という名の酒パックを買ってレジに立っていたら後方からオレの名前を呼ぶ人がいる。振り向くと、巨漢のHさんがいた。
Hさん。オレが書いた“介護する人々”の中でも取材させてもらった人で、その当時はお母さんのアルツハイマーで悩み、生きることにもがき苦しんでいた。
しかーーーし.....
実は、Hさんのお母さんが昨年なくなった。オレとオレの友人である介護職の女性とお悔やみにも寄った。そして1年と数ヶ月ぶりに再会したのだけれど、Hさんは10キロ痩せて介護太りから脱却し、顔の色つやはスコブル良かった。オレはHさんの変貌ぶりにビックリ。当時と比較して見た目、10歳は若返っていた。
オレは介護という現実の厳しさを改めて実感させられたけれど、Hさんを取材した頃のオレが今のオレなら、かなり違った視点でHさんを捉えていたなと考えさせられた。つまり、当時のオレはアルツハイマー病介護という難題をイメージでしか捉えられなかったということだ。
さてと、オレもそろそろカット屋に行って、イメチェンするかな? 赤髪もいいなあ!?

★10月17日
現在時、16日の午後6時半。和ちゃんはお疲れモードで、もう就寝。オレはときどき心配になって和ちゃんの口元に顔を近づける。眠りが深すぎるのか? 死んだように眠るという表現がピッタリだから息づかいを確認する。そして、今晩から肌着を半袖シャツから長袖シャツに替えた。
さて、オレは今日、介護保険法下での移送サービスについて問いただしたく、岡山県保健福祉部長寿社会対策課を訪ねた。結論を簡単に言ってしまえば、オレの勉強不足ばかりが際だった形になった。
●轟沈●
オレは県庁をあとに、テンポアップした“海ゆかば”を口ずさみながら、行き着けの喫茶店グロスへと向かった。グロスで驚きの事実を聞く。グロスで時々、写真の個展をやる東京の週刊誌記者氏がこの11月に本を出版するという。内容の詳細は記せないのだけれど、部数が初版2万部。
キャー!!
 オレの初版、といっても初版止まりの可能性が濃厚になってきているけど2千部。しかし、出版不況下での2万部はスゴイ。単純に計算しただけでも、推定だけど初版で最低300万円ガッポガッポ。
人生様々だよなあ!!